苔翠園 森川孝一
- 「生涯現役」 期待に応える職人
- Wick Canvas 編集部
- 更新日:2022/8/31
- 投稿日:2022/8/31
- 職人
大自然の中で育つ1000本の盆栽
まず目に飛び込んでくるのは、園内にずらりと並ぶ大型の盆栽。大自然の中に荘厳な雰囲気で佇む1000本近い盆栽は、すべて竹内さん一人で管理している。毎年出荷する本数を掘り起こし、鉢に植え替えるという。
「鉢上げ」と呼ばれるこの作業は、盆栽が大きくなるほど実に大きな労力を要する。しかし竹内さんは70歳近くになっても現役でこの作業を続けている。
何十年もかけて大地に根を張り続けてきた盆栽を掘り起こすのだ。それが並大抵の作業でないことは、容易に想像できるだろう。
「求められたら応えたい。喜んでもらえると嬉しい。だからこのまま生涯現役で続けたいね。」
作業中の真剣な表情から一転、そう語る竹内さんの顔は柔らかく、温かな笑顔だった。
自分に厳しく、人に優しい盆栽職人
本職の盆栽の仕立てはもちろん確かな仕事で、その技術の高さは職人仲間からも一目置かれている。自分に厳しく人に優しい竹内さんの人柄が、仕立てた盆栽にも自然と表れている。
五葉松は他のマツ類に比べて成長が遅く、盆栽の樹種の中でもその遅さは際立っている。それゆえ風格ある五葉松の盆栽はかなりの樹齢を伴う。出荷までの期間が長いと枯れるリスクや管理の手間が増すため、生産者に敬遠されがちな傾向がある。そういった背景から、五葉松の成長を早める台木黒松への接ぎ木技術が発展してきた。盆栽の産地である高松もその一例だ。そのような風潮の中で、成長の遅い五葉松を長い年月をかけて幼木から育て上げてきた竹内さんの姿勢には、深い敬意を感じずにはいられない。
和物ファンのためにメダカ販売も
盆栽だけでなく、メダカも数千匹を飼育して販売している。同じ和の趣として、盆栽と一緒に育てる愛好家が多い。これもきっかけはお客様に求められたことから始まった。今では多くの品種を育てており、なかでも楊貴妃やみゆきなどが人気だという。
求められたら応えたい。竹内さんの職人人生を体現する姿が、緑古園で見て取ることができる。
温かな笑顔の盆栽家
「継続は力」であると、盆栽を取材していて改めて実感することになるとは思ってもみなかった。広大な盆栽畑を目の前にして、そう感じた。
盆栽は長い年月と人の手を必要とする。すぐに結果が出るものではない。ゆっくりと流れる時の中で季節ごとに成長していく盆栽は、竹内さんによってここまで育て上げられてきた。喜んでもらいたいと続けてきたことが竹内さん自身の技術へと繋がり、その盆栽はさらに多くの人から求められるようになる。
これからも樹々と対話を重ねながら試行錯誤を続けることで、竹内さんの盆栽は今後もさらに多くの人から求められる存在であり続けるだろう。
緑古園(りょっこえん)









