盆栽と園芸・ガーデニングの違いとは?盆栽の考え方を徹底解説
- 似ているようでまったく異なる盆栽と観葉植物。盆栽を始めるには、まず正しい理解から。
- Wick Canvas 編集部
- 更新日:2022/8/23
- 投稿日:2022/8/01
- 盆栽について
- 知識
- 初心者向け
「盆栽」も「園芸」の鉢花も、鉢の中に植えられた植物という点では共通しており、植物を鑑賞するという観点では「盆栽」「園芸」「ガーデニング」はいずれも同じとも言えます。Wick Canvasでは、これらの違いや共通点を理解することで、それぞれの鑑賞の仕方・生育の仕方・盆栽の仕立て方への心構えを養っていただけると考えています。
目次
- 盆栽と園芸・ガーデニングの違い
- 盆栽における鉢との相性
- 盆栽の正しい眺め方
- 観葉植物との違いとは
- 園芸・ガーデニングと盆栽の似て非なる点
盆栽と園芸・ガーデニングの違い
盆栽は園芸やガーデニングとは異なる芸術です。
「園芸」と「ガーデニング」も同じように捉えられることがありますが、厳密には意味が異なります。
「園芸」とは果樹や野菜などの植物を育てることであり、「ガーデニング」は庭全体をひとつの風景として作り上げ、植物の配置を工夫しながらより良い状態で成長できるよう世話をすることを指します。
「園芸」の目的がひとつの植物を美しく生き生きと長く育てることにあるのに対し、「ガーデニング」は庭全体をひとつの景観としていかに美しく見せるかが重要なポイントです。
「園芸」は庭がなくても、ひとつひとつの植物に丁寧に愛情を注ぐ姿勢であり、全体の景観は二の次となります。「ガーデニング」が植物への愛情に欠けるということではありません。
「園芸」も「ガーデニング」も、それぞれ異なる視点から植物を考え、最良の環境を整えようと努力しているのです。
「盆栽」は主に浅い容器=浅鉢に栽培される植物のことであり、自然の風景を小さな鉢の上に表現する醍醐味を味わうものです。本来は大木になるような樹木を小さく仕立て、植物が持つ雄大さや美しさを凝縮して表現するものなのです。植物そのものと鉢とで全体をなし、その全体を鑑賞します。
一方「園芸」は主に深鉢が使われており、花や草木そのものを楽しむものです。「園芸」において鉢植えにこだわったとしても、鑑賞の主体は植物自体であり、鉢はあくまで脇役にすぎません。植物が活き活きと育つ環境を整え、各々の植物の性質を引き出すのが「園芸」できる内容です。
たとえば「桜の鉢植え」であれば、ある程度の大きさの鉢を使って水もちや根張りを確保しますが、「桜の盆栽」であれば小さな鉢で樹高を抑え、1〜2年に一度は植え替えて根を切り、成長を制御しながら理想の樹形を追求していく栽培方法となります。
理想の樹形を追求していく「盆栽」は、盆=鉢に“自然の縮図”を作り上げる故です。大木や古木の風情を持たせるものだけに、鉢植えに比べるとより長い年月をかけて育てる必要があります。その工程、完成しつつも流動していく盆栽の有り体は、“侘び寂び”を体現するもので、日本独特の伝統芸術であり、栽培技術や作り手の独創性にも細やかさが要求されるのです。
樹形も異なり、「盆栽」は下に向かって広がる不等辺三角形に整えられることが多く、「園芸」の鉢植えは上に向かって広がる逆三角形が主となります。共通するのは、切り花と違い「根付いている」という点です。
盆栽における鉢との相性
「盆栽」は植物・樹木だけを見るのではなく、鉢との相性が重視されます。樹木と鉢との相性を「鉢映り(はちうつり)」といい、鉢映りのよい盆栽が高く評価されます。
盆樹と鉢が一体となって成り立つため、樹形づくりの過程に合った鉢が必要です。樹形が完成した盆栽でも、その樹形を引き立てる鉢合わせは欠かせません。また、樹木と鉢が完全に調和したと思われても、樹の成長や変化に合わせて再度鉢合わせが必要になることもあります。
「盆栽」にはそれぞれの樹形に合った鉢型があり、大まかには松柏類には釉薬のかかっていない素焼きや焼き締めなどの「泥もの」、雑木類には色鉢の「釉薬もの」が用いられます。
また、樹が細くて繊細な印象のものには浅くて丸みのある鉢、幹が太くて力強いものには角ばったやや深さのある鉢が、懸崖には皿型・正方形・六角・八角の下方鉢などが似合うとされています。
盆栽の正しい眺め方
植物には花が咲いている、実がたわわになっているなど、美しく見える角度があるかと思いますが、「盆栽」にははっきりとした正面があり、「盆栽」の鑑賞価値が最も高いのが正面です。植物は本来、右からも左からも、前からも後ろからも眺めてよいわけですが、「盆栽」は正面からの姿を意識して作られます。
かつて「盆栽」は床の間に飾られることが多く、一方向からの鑑賞が主流だったため、表と裏が存在します。幹の曲がり方・根の張り方・枝ぶりなど、樹の良さを発見し「どの方向から見ると最も美しいか」を考えると、自ずと正面が決まります。「盆栽」の正面とは、はさみと針金によって自然の風景を切り取って描く風景画のようなものであり、「園芸」の立体的な鑑賞とは趣が異なります。
鉢植えが植物を育て成長させることを主目的とし、植物の姿形や香りをわかりやすく鑑賞するのに対し、「盆栽」では変化していく過程そのものも鑑賞の対象として楽しみます。
「盆栽」は高度な技術と長い管理期間・手間をかけながら、屋内で鑑賞するのは2〜3日程度であり、1年を通じて屋外管理が基本です。数日にわたって屋内鑑賞したい場合も、数日おきに屋外に出して休ませたり、半日でも外に置いたりします。根切りで成長を抑制するため鉢も極端に小さく、特に夏は何度も水やりが必要です。
観葉植物との違いとは
眺めて楽しむのは「観葉植物」も同じではないかと思われる方もいるかもしれませんが、「観葉植物」は基本的に年間を通じて室内で栽培できる植物のことです。
「観葉植物」の定義は、「植物の葉の形・大きさ・色・模様などを見て楽しむ栽培植物」ということです。
「盆栽」と同様に、大木になるものを小さく育てるケースも多く、どちらかといえば植物本来の樹形の再現ではなく、成長しきれないまま幼株の状態でいるものを鑑賞します。熱帯産の植物は暑さに強く寒さに弱いため、日本の風土では実質的に大きく育たないことも影響しています。
たとえば定番の観葉植物「ポトス」は初心者でも育てやすく品種も豊富で、幅広い層に楽しまれています。日本で販売されているポトスのほとんどは幼株で葉も小さく卓上でも愛らしいですが、原産地の熱帯雨林では葉が1m近くになる大型植物です。
ポトスは基本的に室内で管理するため、室内がジャングル化しないよう剪定を施しますが、その目的は植物が室内環境で健やかに美しく育てるためであり、「盆栽」の剪定とは一線を画します。
園芸・ガーデニングと盆栽の似て非なる点
「園芸」とは、観賞用・食用の植物(野菜・果物など)を栽培すること、またその栽培技術のことであり、
「ガーデニング」とは植物を育てるだけでなく、配置・色彩・季節などを考慮しながら多種多様な植物を用いて庭に柵や生け垣を配置しつつ庭造りを楽しむ、あるいはベランダやテラスに草花を植栽して限られたスペースをデザインしていくこと
できる内容です。
「盆栽」は樹を健康に育てるという点では「園芸」に近いと言えます。しかし、育てる過程でさまざまな工夫を施し、鉢全体をデザインするという点では「ガーデニング」にも通じるものがあります。
「盆栽」を仕立てる過程では、葉の茂み具合や色合いの調整、一本の幹を強調するために枝や花の数を減らすなど、空間的な技法が多く用いられます。
「園芸」においても「盆栽」においても剪定は必要ですが、植物を大きく育てることに重点を置く「園芸」では成長点を残すことが求められ、一定の大きさを保つ「盆栽」では成長点を切り取ることが必要となり、まったく異なる剪定方法が求められます。
植物を生き生きと保ちながら成長させることをめざす「園芸」と、一定の大きさを維持しながら育てる「盆栽」とでは育て方に違いがありますが、いずれも植物への愛情を注ぐことは不可欠です。「盆栽」も「園芸」も「ガーデニング」も、それぞれ異なる視点から植物を考え、最良の環境を作ろうと努力しているのです。
日本の「盆栽」が持つ形の種類や思想は、「園芸」とも「ガーデニング」とも異なる文脈の中で、長い時を経て積み重ねられ、日本独自の文化として成熟してきたものです。
さまざまな相違点について述べてきましたが、これから「盆栽」を始めようとする場合、違いや技術を突き詰めすぎるのも考えものです。「盆栽」を始めるにあたっては、「園芸」や「ガーデニング」と同じく、植物を慈しむ気持ちを持ち、木や草をあせらずゆっくり育てていこうという心構えを持つことが大切なのです。









