盆栽鉢の選び方 — 樹の魅力を最大限に引き立てる鉢とは
- 盆栽の良し悪しは鉢でも決まる。鉢の種類と特性を知って、盆栽づくりをより楽しいものにしましょう。
- Wick Canvas 編集部
- 更新日:2022/8/25
- 投稿日:2022/8/25
- 基本の管理
樹を選ぶことも大切ですが、盆栽において鉢選びは鑑賞上の最重要テーマと言っても過言ではありません。鉢は樹の生育を支える大地の役割を担うとともに、樹を引き立て一体化させ、縮景を作り出す重要な役割を持ちます。剪定や樹形づくりの楽しさに加え、調和のとれた盆栽鉢を選ぶことも、盆栽の醍醐味のひとつです。
盆栽を健やかに育てるためにも、盆栽の世界観を体現するためにも、鉢の種類や特性を理解しておきましょう。
盆栽鉢のルーツもご紹介していますので、歴史や背景に思いを馳せながら鉢を選ぶのも、一歩進んだ盆栽の楽しみ方です。
目次
- 盆栽鉢とは
- 鉢合わせについて
- 盆栽鉢の種類
- 盆栽に適した鉢とは
- 鉢の形
- 鉢の構成
- 鉢の種類
- 鉢の産地
- 鉢の呼び方
- 盆栽鉢の産地
- 盆栽鉢作家
- 樹種と鉢
- 樹形と鉢
- 鉢の手入れ
- オリジナルの鉢
- 盆栽鉢づくり
- 盆器の歴史
- 鉢選びのポイント
盆栽鉢とは
樹と一体となり盆栽の魅力を引き立てるのが盆栽鉢(盆器)です。形状・色・焼き方・大きさなどさまざまな鉢がありますが、樹とのバランスを見ながら、思い描く盆栽の姿を想像して鉢を選ぶのも盆栽の楽しみのひとつです。
鉢の選び方によって盆栽全体の印象は大きく変わります。愛好家の間では「樹が先か鉢が先か」と言われるほど、鉢選びは重要なテーマです。
樹を立派に育てても、鉢との調和が取れていなければ盆栽として成立しているとは言えません。「盆」は器・入れ物であり、「栽」は植物を指します。
樹だけを見るのではなく、鉢との相性が重視されます。鉢植えが植物自体の鑑賞を主とするのに対し、盆栽は植物の姿とともに背景をも取り込み、自然の縮景を盆上に表現するものです。
自然美と人工美の調和が見どころである盆栽において、鉢との一体感も重要な鑑賞ポイントです。床の間に飾る際は、掛け軸や添え物と鉢の調和も求められます。
関連記事
- 盆栽鉢のイメージ画像
- 盆栽鑑賞がもっと楽しくなる!知っておきたい5つのポイント
- 盆栽について
- 続きを読む >
また機能面では、成長中の樹は1〜2年ごと、成熟してくると3〜5年ごとに植え替えが必要です。樹の大きさや成長具合に合わせて鉢を選ぶようにしてください。
関連記事
- 盆栽鉢の参考画像
- 初めての植え替えで押さえておきたい5つのポイント
- 基本の育て方
- 続きを読む >
鉢合わせについて
樹と鉢を上手に組み合わせることを「鉢合わせ」と言います。その相性のことを「鉢映り」と呼び、鉢合わせの結果として盆栽全体の見栄えが「鉢映り」として現れます。
相性がよいものを「鉢映りがよい」、悪いものを「鉢映りが悪い」と表現します。
盆栽を始めると、鉢ごと購入するだけでなく、自分で樹に合う鉢を選びたくなります。しかし実際に選ぼうとすると迷ってしまうこともあります。
盆栽の樹には松柏類・雑木類・花物類・実物類など多くの種類があり、樹形も直幹・斜幹・懸崖・文人木などさまざまです。鉢も種類・色・形が豊富です。
組み合わせが難しく感じるかもしれませんが、鉢合わせのコツをつかめば盆栽の魅力がより引き立ち、奥深さに触れる楽しさも増すでしょう。
試行錯誤を重ねながら鉢合わせを続けることで、盆栽への愛着がさらに深まっていくことでしょう。
鉢合わせはなぜ必要か
1.盆栽は山野・海・川沿いなど自然界に育つ樹を、その風景や背景ごと盆上に表現するものです。自然の縮景を再現するために、樹と調和のとれた鉢を合わせましょう。
2.樹と鉢が調和してぴったりだと感じても、樹の生長や変化に合わせて鉢を見直すようにします。
3.樹形が完成した後に、樹形を引き立てる鉢との組み合わせや植え方を検討してください。
4.鉢植えと異なり、樹と鉢が一体化したものが盆栽ですので、樹形づくりの過程に合った鉢が必要です。
盆栽鉢の種類
盆栽に使用する鉢には、若い樹を培養するための仕立て鉢と、成長した樹を育てるための化粧鉢(鑑賞鉢)の2種類があります。
仕立て鉢
ホームセンターや園芸店などで安価に入手でき、素焼きで赤みがかったものが多いです。通気性・水はけ・保温性に優れ、根の発育がよく樹の生育も早いです。一般的に大きさによって三号鉢・四号鉢などと呼ばれます。挿し木・取り木・新木などの培養用として最適です。
果物や野菜のパック・発泡スチロール・木箱など、身近な容器に排水用の穴を開けて代用することもできます。
化粧鉢(鑑賞鉢)
一般的に盆栽鉢といえば化粧鉢(鑑賞鉢)を指します。この鉢によって盆栽の魅力は大きく変わります。化粧鉢は樹を引き立てる衣装のようなものと考えてください。
形だけにとらわれず、焼き上がりの具合や陶土の種類なども考慮し、樹種や樹形に合ったものを選びましょう。樹によく調和した化粧鉢によって趣が格段に増し、樹もより一層すばらしく見えます。
盆栽に適した鉢とは
盆栽の鉢は、機能面・見た目の両面で基本的な条件を満たしていることが大切です。植物を育てる機能面の条件と、鑑賞における形状面の条件に合ったものを選びましょう。
樹と鉢のバランスを確認する際は、目線を鉢縁と水平にした位置から眺めるようにしましょう。
1.通気性がよい
植物の根は地中で栄養・水分を得て呼吸もしています。そのため鉢の通気性のよさは必須条件です。
通気性がよいと放熱性も優れ、鉢内の温度管理がしやすくなります。内側に釉薬がかかっていると通気性が低下し根の生長に悪影響を及ぼすため注意が必要です。
2.適度な排水性・保水性がある
鉢内が乾きやすいと植物の生長が悪くなります。水が抜けない状態は根腐れの原因となり生育に悪影響を及ぼします。適度な排水性と保水性の両立が必要です。
排水性・保水性は鉢の素材や焼き方に大きく左右されます。釉薬の有無によっても変わり、釉薬があるものの方が保水性は高くなります。鉢底の穴の大きさや位置も影響します。
3.熱を吸収しやすい
植物には生育に適した温度条件があり、根の発達においても鉢内の温度が重要です。鉢は土中の温度に影響するため、太陽熱を保ちやすい鉢を使うことで生育が助けられます。一般的に素焼きの鉢は太陽熱をよく吸収し保温性もあるため、盆栽の生育に適しています。
真夏は鉢内の水が溜まって温度が上昇し、植物の生育が悪くなることもあるため、鉢の排水性でカバーします。
4.見た感じ、樹に合っている
機能面とは別に、鑑賞面で樹種や枝ぶりに合った鉢かどうかが重要です。樹形や樹の大きさによって合わせる鉢も異なり、樹と鉢のバランスが盆栽の価値を左右すると言っても過言ではありません。
樹形によって長方形がよい、楕円形がよいなどの定石はありますが、厳密に決まった型はありません。それらを踏まえた上で、樹と鉢が調和する鉢選びを楽しんでください。
5.大きさが合っている
樹に対して大きすぎる鉢を使うと、見た目だけでなく根が必要以上に広がり、植え替えがしにくくなります。
反対に鉢が小さすぎると、バランスが悪く根詰まりを起こして生育が悪くなるばかりか、最悪の場合、樹が枯れてしまいます。
樹の大きさを考慮して、ちょうどよいサイズを選びましょう。通常、樹の高さと同程度の幅の鉢を合わせると調和が取れます。
6.深さが合っている
鉢の大きさとともに深さにも注意してください。浅すぎる鉢は根の伸長を妨げ、樹の生長に悪影響を及ぼします。反対に深すぎる鉢は保温性が低下し、土中の温度が下がって生育に悪影響があります。
樹の太さや大きさを考慮して、ちょうどよい深さのものを選びましょう。初心者の方は、ちょうどよいと思ったサイズよりひと回り小さいものを選ぶとよいでしょう。幹の直径と同程度の深さが目安です。
7.歪みがない
鉢底が平らでなかったり、形に歪みがあったり、足がぐらついたりするものは、機能面・鑑賞面のいずれにもよくありません。
歪みによって排水性に支障をきたし根腐れが起こる場合もあるため、歪みには十分注意しましょう。
盆栽鉢の基本条件まとめ
1.通気性がよい
2.排水性・保水性がある
3.熱の吸収がよい
4.見た感じ樹に合う
5.大きさが合う
6.深さが合う
7.歪みがない
鉢の形
鉢の形状によって、以下のように種類が分けられています。
・楕円鉢
・丸鉢
・長方鉢
・正方鉢
・六角鉢
・梅形鉢
・袋式鉢
・下方鉢
・梅形鉢
・創作鉢
鉢の構成
鉢はいくつかの部位で構成されています。各部の名称は、縁(えん)・角(かど)または隅(すみ)・胴(どう)・尻(しり)・足(あし)・穴(あな)などです。
縁
縁の形状には主に「内縁」「外縁」「単口(ひとえぐち)」または「切立(きったて)」の3種類があります。
内縁……鉢の内側に縁が折れており、盆栽の中身が抜けにくくなっている
外縁……鉢の外側に縁が付いている、または沿っているもの
単口……鉢の縁が内側にも外側にも曲がっていないもの
他
玉縁……外縁が玉状になっているもの
縄べり……外縁が縄状になっているもの
角(隅)
鉢の角の形状を指します。四角形の直角のものもありますが、角が内側に入った「隅入り(すみいり)」または「入角(にゅうかく)」は装飾性があります。
他に、丸い角の「撫角(なでかく)」や、角を斜めに切った「隅切り(すみきり)」などがあります。
胴
胴の形状には多くの種類があり、太鼓、鉄鉢、南蛮、反形、切立、椀形、袋形、陣笠、鋲打、クラマなど多彩なバリエーションが存在します。
太鼓……胴の側面に和太鼓を思わせる鋲が施されたもの
鉄鉢……僧侶が托鉢に用いる鉢を模した丸みのある形状のもの
切立……円筒形で、腰から口縁にかけてまっすぐに立ち上がった形のもの
椀形……茶碗のような丸みを帯びた形のもの
袋形……上下が細く、中央部分が膨らんだ形のもの
陣笠……円錐を逆さにしたような形状のもの
鋲打……胴の表面に鋲が打ち付けられたもの
クラマ……縁がなく、不規則な変形を持つもの
胴の模様について
額入り……胴に四角い窓枠状の彫刻が入れられたもの
窓入り……胴の一部に窓枠のような意匠が施されたもの
帯・胴紐……胴の周囲に帯紐を巡らせたような彫刻が入れられたもの
彫入……胴に山水画や各種文様の彫刻が施されたもの
足
盆栽鉢の足は、焼き物では高台と呼ばれ、短いながらも形状は多岐にわたります。
切足……最も一般的な四角い形の足
段足……足が二段構造になっているもの
雲足……足に雲のような文様が施されたもの
鬼面足……足が鬼の面をかたどった形になっているもの
富士足……足が富士山を思わせる形状のもの
色
盆栽鉢の色は大きく「泥物」と「色物」の2種類に分けられます。
泥物……釉薬を使わず、土本来の色合いを活かして仕上げたもの
色物……釉薬を施し、鮮やかで多彩な色に仕上げたもの
泥物はさらに以下のように細かく分類されます。
鳥泥……土の風合いを活かした焦げ茶色
朱泥……鉄さびを思わせる赤褐色
緑泥……緑みを帯びた色合い
桃花泥……黄みの強い茶色
ネズ(鼠色)……灰みがかった茶色
梨皮……梨の表皮のように粒状の模様が浮かぶもの
磨き……丁寧に磨いて艶を出したもの
窯変……焼成中に予期せぬ色変化や変形が生じたもの
釉薬物
各釉薬の種類に対応したまとめ写真
海鼠……青みを帯びた釉薬のもの
瑠璃……深みのある青色の釉薬のもの
均窯……淡い群青色の釉薬のもの
辰砂……深い赤、血の赤とも形容される色合いのもの
青磁……淡い青緑色の釉薬のもの
白交趾……乳白色の釉薬のもの
青交趾……鮮やかな青色の釉薬のもの
「交趾」とは、粘土を絞り出して文様を描いた素地の上に、鮮やかな色釉を盛るように厚くかけた技法のことです。
立体的で重厚な絵付けは独特の迫力を持ち、手触りにも個性があります。黄・紫・緑などの鮮やかな色彩で焼成され、日本では「交趾焼」として古くから珍重されてきました。
「交趾」とはもともと中国・前漢の武帝が南越を平定して設けた郡の名称で、現在のベトナム北部トンキン・ハノイ地方に相当します。後に中国におけるベトナムの呼称となりました。
深さ(高さ)について
【低い】
陶盤
↓
浅
↓
中浅
↓
中深
↓
大深
↓
懸崖鉢(懸崖樹形向けに高さの比率が大きい鉢)
↓
ラン鉢(ラン科植物に適した高めの鉢)
【高い】
鉢のサイズについて
鉢の大きさを表す単位として「号」が使われています。1号=1寸=約3cmに相当します。
もともと「寸」で表されていた名残から「号」が使われるようになりました。大正時代以降にメートル法が導入され、寸尺単位の使用が制限されたことが背景にあります。
当時の人々は「寸」で鉢を測ることに慣れていたため、「寸」を「号」に置き換えて使い続けたと言われています。
号数は鉢の最も膨らんだ部分、すなわち最上部の外径を基準に測ります。高さが同じでも直径が異なれば号数も変わります。
5号鉢であれば、直径は3cm×5=15cmとなります。角形の場合は一辺の長さを基準にします。
外径を基準とするため、縁の形状や鉢の厚みによって内寸の容量や植え付け可能なサイズが異なる点に注意が必要です。
鉢の種類
鉢は大きく分けると、素焼き鉢、朱温鉢・駄温鉢、釉薬鉢、焼締め鉢などに分類されます。
素焼き鉢
700〜900℃程度で焼成され、陶器内部に空隙が多いのが特徴です。通気性に優れ、夏は涼しく冬は保温性があるため、植物の根に適した環境を提供します。
新木の生長促進、株の増殖、挿し木などに広く用いられます。素焼き鉢の種類は、生地に使う土の色によって分類されます。
朱温鉢・駄温鉢
素焼き鉢の中でも1000℃前後の高温で焼成した赤茶色の鉢です。上縁に釉薬が施されたものを駄温鉢、施されていないものを朱温鉢と呼びます。
素焼き鉢より強度が高く、通気性・排水性はやや劣りますが、適度な保水性を備えています。特に駄温鉢は保水性が高く、盆栽の培養に適しています。
焼締め鉢
1100〜1300℃程度で釉薬を使わず長時間焼成します。土本来の風合いが活かされ、自然にかかる灰が自然釉となり、独特の模様や色の変化が生まれます。
素焼き鉢と一見似ていますが、焼成温度が大きく異なるため性質も全く別物です。素焼き鉢は割れやすい反面排水性に優れ、焼締め鉢は高温焼成のため割れにくく透水性が低くなります。
釉薬鉢
一度素焼きした後に釉薬をかけ、1200〜1250℃で焼成します。色のバリエーションが豊富で、選ぶ楽しさがある鉢です。
釉薬を施すことで素焼き鉢に比べ通気性は低下します。一般的には化粧鉢として使用されることが多いです。
鉢の産地
盆栽鉢の産地は主に国内産と中国産に大別されます。国内産は常滑・瀬戸など各地でさまざまな鉢が作られています。
中国産は価格が手頃で使い勝手のよい釉薬鉢が多く流通しています。
産地やブランドにとらわれず、まず樹との相性を優先して鉢を選ぶことが大切です。一方、さまざまな産地や窯を試す中でお気に入りを見つけ、樹と組み合わせる楽しみも盆栽の醍醐味のひとつです。
中国鉢
中国は陶芸の歴史が深く、美術品・骨董品として高い価値を持つ陶磁器を数多く生み出してきました。支那鉢とも呼ばれています。
盆栽愛好家の間でも特に高級な樹を植えるために中国鉢が用いられてきました。近年は安価なものも多く流通していますが、中国産の陶土は質が高く、保温性・保水性・通気性に優れ、盆栽の生育にも好影響をもたらします。中国鉢は日本への渡来時期によって区別されています。
■古渡(こわたり)
室町時代またはそれ以前に渡来したもの。形状・色彩・質ともに風格があり、骨董品・美術品として高い価値を持ちます。
■中渡(ちゅうわたり)
明治時代に渡来したもの。盆栽用として最初から制作されており、培養にも優れています。当時、中国産の鉢は盆栽用として重宝されていました。
■新渡・前新陶
1920〜1940年代に渡来したものを指します。日本の愛好家の好みに合わせて制作が依頼され、機能・形状ともに使いやすい鉢が多数あります。
■新々渡(しんしんとう)
1945年以降に輸入されたもの。数多く流通しており、比較的手頃な価格のものが多いです。
●大昭渡
大正・昭和期に中国で生産され輸入されたものを指します。
●平成渡(へいせいわたり)
平成時代に中国で生産・輸入されたものを指します。大昭渡と平成渡の呼称は1994年に日本の盆栽関係団体が中心となって定めました。現在は安価な釉薬鉢が多く輸入されています。
和鉢
日本では中国鉢の影響を受け、大正〜昭和にかけて盆栽鉢の生産が盛んになりました。当初は大量生産のため形状・質ともに粗く、培養用として使われていました。
中国産の大量輸入が進むにつれ、古渡の中国鉢を手本にした質の高い和鉢も作られるようになりました。
特に戦後、盆栽業界が活性化する中で中国産の不足と品質低下が重なり、和鉢が改めて重宝されるようになりました。
戦後の社会が落ち着きを取り戻すとともに、常滑・信楽・瀬戸などの産地を中心に、優れた盆栽鉢が数多く生み出されています。
鉢の呼び方
鉢に限らず美術品には名称が付けられています。一般的には漢字表記ですが、近年は記号や英字表記も一部見られます。
名称は単なる呼び名にとどまらず、作品の特徴を表していることが多く、産地・作者・釉薬・模様・技法・形状・制作年代・所蔵者などから付けられます。
主に産地や作者、色、形などを基に命名されます。
例)
松陶翠梨皮泥胴紐蕨足楕円
舟山切立長方鉢
盆栽鉢の産地
盆栽鉢は日本各地でそれぞれの特色を持つものが作られています。
日本の焼き物の産地として、日本六古窯と称される越前(福井県)・信楽(滋賀県)・瀬戸(愛知県)・常滑(愛知県)・丹波(兵庫県)・備前(岡山県)が広く知られています。産地によっては美術的価値の高い焼締め鉢で名高いところもあります。
特に常滑は盆栽鉢作りの歴史が古く、著名な作家を多く輩出しています。瀬戸は園芸店などで広く販売される盆栽鉢を大量生産する産地です。信楽は植木鉢の産地としても知られ、近年は盆栽鉢の産地としての認知度も高まっています。
盆栽鉢を生産する主な産地と、それぞれの焼き物の特徴をご紹介します。
九谷焼(石川県)
石川県南部の金沢市・加賀市・小松市・能美市で生産される色絵磁器。江戸時代の古九谷を源流とし、豪華で華やか、大胆な絵柄が持ち味です。色絵の美しさが最大の特徴です。
越前焼(福井県)
丹生郡越前町の宮崎・織田地区で焼かれる炻器(陶器と磁器の中間的なもの)。平安末期に常滑の技術を取り入れた焼締め陶が起源とされています。鉄分を多く含む土を使うため、赤黒・赤褐色の焼き上がりが特徴です。
信楽焼(滋賀県)
甲賀市信楽を中心に生産される陶器。良質な陶土に恵まれ、温かみのある緋色の発色、薪の灰が自然釉となる風合い、素朴な土味が特徴です。たぬきの置物でも広く知られています。
京焼(京都府)
京都で焼かれる清水焼・粟田焼などの陶磁器の総称。江戸時代初期頃から広まり、特定の様式や技法を持たず多様な技法が融合されているのが特徴です。
常滑焼(愛知県)
常滑市を中心とした知多半島で生産される炻器。優れた焼締め技法が受け継がれており、酸化鉄を多く含む朱泥を使うのが特徴で、赤褐色の焼き上がりになります。
瀬戸焼(愛知県)
瀬戸市とその周辺で生産される陶磁器の総称。1000年以上の歴史と伝統を誇り、器を「せともの」と呼ぶ語源にもなっています。釉薬の使用や大量生産技術の先駆けとして、日本の焼き物文化をけん引してきました。
丹波焼(兵庫県)
丹波篠山市今田地区付近で生産される陶器。平安〜鎌倉時代が起源とされ、登り窯で焼かれた器は灰釉・鉄釉により色や模様が一点ごとに異なるのが大きな特徴です。丹波立杭焼とも呼ばれます。
備前焼(岡山県)
備前市周辺を産地とする炻器。平安末期から続く伝統を持ち、釉薬を使わない焼締めで制作されます。素朴な土の風合いが特徴で、長く使っても飽きのこない味わいがあります。
有田焼(佐賀県)
有田町とその周辺で生産される磁器。江戸時代後期まで日本唯一の磁器産地として知られ、染め付けや色絵の美しさが特徴です。
薩摩焼(鹿児島県)
鹿児島市・日置市が産地。庶民向けの黒薩摩(黒もん)と、藩主御用達の豪華絢爛な白薩摩(白もん)という2系統の焼き物があります。
盆栽鉢作家
盆栽鉢にも多くの作家ものが存在します。優れた逸品が数多くあり、初期の作家の作品は骨董的価値も高く、高値で取引されています。
盆栽鉢を専門に扱う古美術商や骨董店も存在し、オークションでも出品されることがあります。
購入の際は、商品の真贋や個人情報に関するリスクに注意し、販売者・出品者の信頼性を十分に確認してから購入するようにしましょう。
作家ものの鉢であっても樹との相性は必ずしも保証されるわけではなく、調和を優先することが鉄則です。ただし作家ものは鉢合わせの試行錯誤から生まれたものが多く、合わせやすいものも多いです。
自分のセンスに合うお気に入りの作家を見つけることも、盆栽の世界をより深く楽しむ醍醐味のひとつではないでしょうか。
盆栽鉢の代表的な作家をご紹介します。
市川苔州(いちかわたいしゅう)1897年〜1971年
明治から戦前にかけて活躍した古典作家。鉄分を多く含む茶褐色の素朴な風合いや、辰砂釉・鉄砂釉を用いた逸品が多く知られています。無落款の作品も多数存在します。
井上良斎 初代:1828年生まれ
東京浅草で開窯。盆栽界では伝説的な陶芸家として知られ、三代にわたり高い評価を受けました。作品数が極めて少ないことでも有名です。
2代目:1845年〜1905年
尾張名古屋の陶工の家に生まれ、初代の養子となり1875年に家業を継ぎました。後に横浜で作陶を続けました。
3代目:1888年〜1971年
初代の長男。2代目に陶技を学び、17歳で家業を継ぎ、近代陶芸の開拓者として知られる板谷波山に師事しました。
永楽善五郎(17代目)1944年〜
京焼の名家のひとつ。室町時代末期から千家十職の土風炉師を務め、10代以降は茶陶も手掛けています。モダンで侘びを感じさせる作品を多く生み出しています。
植松陶翠(うえまつとうすい)〔本名:植松長太郎〕1899年〜1959年
東京滝野川生まれ。陶翠窯の歴史は明治時代にさかのぼり、小鉢界の歴史そのものと言われる存在。中国鉢・日本鉢の輸入販売を手掛け、デザインを考案して全国の陶業家に制作を依頼しました。
小野義真(おのぎしん)1839年〜1905年
高知県の大庄屋の出身。明治時代の実業家で、本邸内に窯を設けて本格的な作陶を行いました。釉薬の配合や焼成温度に緻密なこだわりを持つことで知られています。
昭阿弥(しょうあみ)〔本名:初代 高野網一〕1905年〜1993年
京都蛇ヶ谷にて開窯。二代続く京焼の名家で、染め付け・色絵・交趾など豊かな色彩と京焼の伝統を踏まえた作風が高く評価されています。
2代目(本名:進次郎)1941年〜
6人兄弟の次男。初代に師事し日本画を専攻、大学院修了後に家業を本格的に継承。2006年頃から角物も手掛けています。
舟山(しゅうざん)〔本名:鈴木春司〕1928年〜1988年
愛知県東郷町にて作陶。たたら作りの技法を用い、中国鉢の伝統に倣いながら日本人好みの新しい型と土肌を開発。自身も盆栽愛好家であったため、機能美と実用性を兼ね備えた鉢作りで知られています。
秀峰(しゅうほう)〔本名:片岡晋〕1944年生まれ
1923年創業の片岡陶園4代目として1974年に秀峰号を継承。釉色物を中心に堅実な作風で知られ、小鉢から超大型鉢まで幅広く制作。釉の独自の工夫が随所に見られ、広東緑釉のような窯変に秀作が多いとされます。
竹本隼太〔本名:竹本正典〕1848年〜1892年
徳川幕府旗本の家の出身。明治維新後、東京小石川に含翠園を開窯して陶業を営みました。薩摩焼から三彩、磁器へと移り、中国清朝の陶磁に影響を受けた単色釉の作品で知られる明治を代表する小鉢作家です。
平安東福寺〔本名:水野喜三郎〕1890年〜1970年
京都生まれ。盆栽界で最も名の知られた鉢作家のひとり。盆栽鉢専門の作家として1920〜30年代から約40年にわたり数万点の鉢を世に送り出しました。登り窯を使用したため、鉢の風合いは一点ごとに異なります。
宮川香山(真葛香山)〔本名:宮川虎之助〕1842年〜1916年
京都の陶工の四男。横浜に窯場を移し、真葛焼を世に広めました。1945年に戦災により閉窯。色絵付けと立体造形に秀でた作品を展開し、盆栽鉢にも優れた作品を残しています。
中野行山(なかのぎょうざん)1940年〜
常滑にて作陶を学び、現地を代表する泥物鉢の名手・渓仙に師事。1972年に独立後は泥物鉢を専門とし、小型から超大型まで多彩なサイズ・形状の鉢を手がけてきました。近年は大型鉢の制作を抑え、タタラ・紐作りによる手びねりの鉢に注力しています。
渓仙(けいせん)[本名:久田雅夫] 久田陶房 1933年
戦後の常滑における盆栽鉢づくりを支えた一人。先代の型と土目を受け継ぎ、泥鉢一筋で作陶を続け、独自の磨き技法を確立したことでも知られています。手びねりの作品は柔らかな線が持ち味です。型押しによる量産品にも独特の風情があり、根強い愛好者がいます。現在は鉢の生産を休止中。
野仙(やせん)
本名も生没年も定かでない幻の陶工とされ、明治末期から大正期にかけて水盤の名品を数多く生み出しました。大酒飲みで、水盤を抱えて里へ下りては一升瓶と交換し、また山奥へ戻っていったという伝説が残ります。明治中期以降の作品が皇室ゆかりの施設に所蔵されています。
樹種と鉢
松柏類
朱泥・紅泥・紫泥・鳥泥・梨皮泥(梨の皮のような細かな点が見えるもの)など、いわゆる「泥物」と呼ばれる鉢。松柏類には古くから泥物が好んで用いられてきました。
釉薬をかけない土肌ならではの風合いと落ち着きが、松柏類の持つ品格と静けさをいっそう引き立ててくれます。
雑木類
一年を通じて緑を保つ松柏類とは異なり、新緑・深緑・紅葉と葉の変化を楽しみ、落葉後の樹形も味わえる雑木盆栽。合わせる鉢は、派手さを抑えたやや控えめな釉薬の色合いがおすすめです。緑・紅葉・落葉後それぞれの姿をイメージしながら鉢の色を選びましょう。
花物類
花の咲いた姿が鑑賞のピークとなる花物類。白・赤・ピンク・青・黄・紫など色とりどりの花が場を華やかに彩ります。その花色を引き立てるよう、できれば花の色と同系色にならない鉢を選ぶとよいでしょう。
実物類
実物類も、実の付いた姿が鑑賞のピークです。実の色を引き立てる鉢の色を選ぶようにしましょう。また、結実したときのバランスを考え、やや深めの鉢を選ぶことをおすすめします。
樹形と鉢
基本的には、幹の太い樹には重厚感のあるどっしりとした鉢、幹の細い樹には浅くて軽やかな鉢、古木には趣のある落ち着いた鉢、柔らかな雰囲気の樹には角のない鉢、背の高い樹にはあえて浅めの鉢を合わせるとよいでしょう。
樹形によってある程度鉢の方向性が絞り込めますので、順に見ていきましょう。
直幹
幹が真っ直ぐに伸び、根元から先端へ向かって自然に細くなり、枝葉のバランスも整った、初心者にも最もわかりやすい樹形の一つです。
持ち味を活かすには、浅型の楕円形や長方形の鉢を選びましょう。幹の太さに応じて深さを調整します。枝張りがよく力強い樹には縁のある鉢、幹が細い樹には細長い短冊鉢が適しています。
斜幹
崖や海辺の傾斜地で強風を一方向から受け、反対側へ傾いた樹を表す樹形です。傾斜地の雰囲気を出すために中深鉢を選ぶとよいでしょう。
鉢とのバランスが非常に重要で、植え付け位置は傾いて下がっている側を広くとると安定感が生まれます。どっしりとした松柏類には長方形の鉢、柔らかな雰囲気の雑木類には楕円鉢が調和するでしょう。
模様木
アルファベットのSを思わせる曲線を描く樹形です。そのバランスの重量感と安定感に見合った鉢を選ぶと引き立ちます。浅すぎると軽く見え、深すぎると安定感を損なうため、中深の鉢が適切です。ただし幹の模様によっては浅い丸鉢が合う場合もあります。樹形に力強さがあるため、茶・褐色系の自然な風合いの鉢がよく似合います。
懸崖・半懸崖
樹の先端が鉢縁より下に垂れ下がる樹形のため、調和をとるには深めの正方形・六角形・丸鉢が合います。半懸崖では幹の立ち上がりや樹の流れ具合によって、楕円形や皿型の浅めの鉢も適しています。
株立ち
根元でつながった3本以上の幹が地際から立ち上がり、大木の風格を表す樹形です。引き締まった落ち着きを出すために、浅めの丸鉢や縁のない切立の長方形の鉢が合います。樹種によっては中鉢も適しています。
寄植え・根連なり
根連なりは本来一本の植物ですが、いずれも複数の樹が同じ鉢に植えられた姿をしています。大地に連なる自然の景色を表すには、控えめな趣の長方形や楕円形の浅鉢が適しているでしょう。
文人木
細い幹がひょろりと上方へ伸びた軽快な姿のため、その雰囲気を引き立てる軽やかな丸鉢や正方形の鉢が合います。浅型または中型の鉢がよりよく引き立つでしょう。
石付き
断崖絶壁や孤島を思わせる石付き盆栽は、石に樹を植えて仕立て、木と石の調和で見せるものです。石付きに向く石は、起伏や変化のある立石・平石の形のものです。浅い水盤に砂を敷いて鑑賞したり、浅型の丸鉢で仕立てたりします。
鉢の手入れ
盆栽は自然の縮景を盆の上に表すという概念を根底に持ち、何十年・何百年という樹姿を写し取るものでもあります。樹齢に関わらず古さを感じさせる樹を「古色(こしょく)がある」と言います。
古色や樹が纏う歴史感を表現する際、鉢が合っていないと樹と器の調和がうまく機能しません。
では、単に古い器を使えばよいかというと、そうでもありません。手入れを怠り泥やカルキが付着した鉢は、ただ汚れた鉢になってしまいます。
古くて趣のある鉢は骨董としての価値も生まれ、価格的にも心情的にも気軽に日常使いにしにくいと感じる方もいるかもしれません。眺めて満足される方もいますが、埃を払ったり磨いたりといった最低限のお手入れは必要です。
鉢のお手入れは、樹の管理とは異なり、怠っても樹が枯れるような差し迫ったものではありません。まずは収納・保管に気を配ることが第一ですが、時折手入れをするよう心がけましょう。
お手入れも含め、樹に合うよう鉢を育てていくことも盆栽づくりの楽しみの一つです。ぜひ盆栽作りを楽しんでください。
鉢の磨き方
水やりによって、カルキのミネラル分や肥料成分が鉢に付着し、白く固まることがあります。
これを防ぐには、濡れた布で定期的に拭き取るようにしましょう。
こびりついてなかなか落ちない場合は、クエン酸や酢を含ませた布で拭き取るか、水を張ったバケツにクエン酸や酢を適量加えて鉢を浸しておく方法があります。
クエン酸はドラッグストアやホームセンターなどで手軽に入手できます。汚れの程度や鉢の数・大きさに応じて、水やクエン酸の量・浸す時間・日数を調整してください。
浸した後は、スポンジやたわしで、鉢の表面を傷つけないよう注意しながら汚れを擦り落としましょう。汚れを落としたら、クエン酸が植物に影響する恐れがあるため、薬品が残らないようしばらく水に浸けておくとよいでしょう。
その他、盆栽道具の錆落としに使われる「クリーンメイト」や「サビトール」なども、盆栽鉢の汚れ取りに活用できます。
「クリーンメイト」は消しゴムと軽石の中間のような感触で、鉛筆を消す感覚で汚れを落とせます。どちらも使用前に、肌や髪のケアにも用いられる椿油を少量つけてから使うようにしましょう。
「サビトール」は弾性の研磨剤で、細目・中目・荒目の目の粗さがありますが、盆栽鉢には中目を使用するとよいでしょう。
こすりすぎて鉢に傷がつかないよう注意してください。汚れを取り除いた後は「椿油」を布に含ませて鉢によく刷り込み、艶を出して仕上げましょう。
鉢に古色を出す
古色のある樹に合わせる鉢も、同様に古びた風合いが調和します。すでに年代物・骨董品の鉢も存在しますが、多くはネット通販や盆栽専門店などで購入することになるでしょう。
新しい鉢を購入したら、屋外に並べて雨風にさらしてみてください。しばらく経つと、使い込んだような味わいが生まれます。こうして時代感の付いた鉢は、古色のある樹とも自然に調和します。
並べる際は、できればゴザやかごの上に鉢底を上にして置き、重ねないようにします。軽い鉢は強風で飛ばされないよう注意しましょう。
また、古色を出すために、盆栽鉢として使う前に手軽な草花を植えて育てたり、しばらく土だけ入れておいてから盆栽鉢として使い始めるという方もいるようです。
オリジナルの鉢
盆栽鉢は盆栽専門店・園芸店・ホームセンターなどで販売されており、気に入った鉢を探す楽しみもあります。
既製品から好みの鉢を探す楽しさもありますが、身の回りのものを代用したり、自分で作ってみることも盆栽愛好の醍醐味の一つです。ぜひ挑戦してみてください。
身の回り品での代用
◆湯呑み
◆コップ
◆片口
◆小皿
◆茶碗
◆楊枝立て
◆ピッチャー
◆貝殻
◆瓦
◆竹筒
など、小ぶりな器であれば代用できる可能性があります。どんな樹をどのように植えるか、構想を練るところから始めてみましょう。
→選び方のポイント
・排水孔が開けやすい
・樹形に合っていて、なおかつ植え込みやすい形かどうか
・色が合っているかどうか(※ご自身で着色することも可能です)
作り方
1.排水孔を開ける。
湯呑みやコップなどは割れやすいため、いきなり釘を打ち付けないようにしてください。器の中に砂や布を詰め、タガネで軽く叩いてみましょう。釘やキリを使う方法もあります。
市販の電動ドリルでも孔を開けることができます(下記に開け方を説明しています)。直径5cm以上のものには孔を2か所程度開けるとよいでしょう。底に曲線や傾きがある場合は、水がたまる部分に孔を開けてください。
2.足をつける。
足が必要な場合は、木片・ガラス・金属など形と高さが揃った4つの足を接着剤で鉢底に取り付けます。接着剤は素材に合ったものを使用してください。
※木製・竹製など腐りやすい素材には、ビニールを敷いたり防腐剤を使用したりして工夫してください。
※平たい器には、水苔で土手を作ってから、その内側に用土を入れるようにしましょう。
電動ドリルでの孔の開け方
【用意するもの】
・鉢として使用する器
・電動ドリル
・霧吹き
・鉢底ネット
開け方
1.器をふきんの上に置きます。
2.孔を開ける位置を決めます。
3.孔を開ける周辺を霧吹きで濡らします。
4.電動ドリルで孔を開けます。
5.孔の部分に霧吹きで水をかけながら削ります。
(※電動ドリルは使用方法に従ってご使用ください)
6.孔を開けたら、周辺を削って孔を広げます。
7.鉢底ネットを張ります。
8.足を取り付けます。
孔を開けずに作る方法
器を再利用したいため孔を開けることに抵抗がある場合や、豆盆栽を小さな器に植え替えたい場合など、孔を開けずに済む方法をご紹介します。
【用意するもの】
・茶こし(使用する器の大きさに合ったもの、鉢にしたい器よりひと回り小さいもの)
・湯呑み、そばちょこ、小鉢など
作り方
1.茶こしに用土を入れ、盆栽にする樹を植えます。
2.1を好みの器に入れます。
※水やりは盆栽鉢から茶こしごと取り出して行います。
※鉢に水がたまると根腐れの原因になりますので注意しましょう。
盆栽鉢づくり
樹は成長とともに姿・形・趣が変わっていくものです。微妙な変化に合わせ、樹への負担を考慮しながら、盆栽鉢も洋服のように替えられると楽しみが広がります。比較的手軽に作れる鉢づくりをご紹介しましょう。
鉢の作り方
【基本的な道具】
○陶芸粘土(市販の陶芸用粘土)
○粘土板
○コテ・ヘラ
○家庭用電気窯またはコンパクト電気窯
作り方の画像またはイラスト
作り方
1.土を準備します。
粘土を練って空気を抜きます。水を加えて成形しやすい硬さに整えます。
2.粘土を団子状にまとめます。
3.台の上に置き、親指を粘土の中央に差し込み、残りの4本指を外側に添えます。そのまま粘土をつまむようにしながら、穴を外側へ広げていきます。
4.粘土で小さな団子を4つ作ります。
5.形ができたら、4つの団子をひっくり返して足として取り付けます。ヘラで形を整えます。
たたら作り
1.粘土を板状に伸ばします。
長方鉢の場合:同じ高さ・長さ・厚さのものを2枚ずつ、計4枚
底:1枚
縁:同じ高さ・長さのものを2枚ずつ、計4枚
足:同じ高さ・長さのものを4つ
2.板状にした粘土を張り合わせます。
手ひねり・紐作り
作り方の画像またはイラストを挿入
1.粘土を手で丸めます。
2.台の上に置き、親指の付け根のふくらみで中心付近を軽くへこませるように叩きます。周りを叩いて縁を軽く盛り上げます。
3.手を湿らせ、片手に収まる程度の少量の粘土を取り、両手を前後に動かして先端(下方)を尖らせます。
4.尖らせた先端を小指の太さに整えます。
5.紐状にした粘土を重ねながら下へ力を加え、ひも状のものを作ります。一段ずつひも状のものを輪にして余分な粘土を切り取ります。
6.下から上へ側面の粘土を持ち上げ、少しずつひも状のものとつなげていきます。内側は上から下へひもの3分の1をこすり付けます。
7.これを繰り返し、厚みが4〜5mmになるまで上へ伸ばします。
8.最後に足を付けるか、削り出します。
手廻しろくろ・小型卓上電動ろくろ・電動ろくろなどを使うと、成形に慣れれば均一感のある鉢を作ることができます。
成形後は……
↓
素焼き/焼成
成形した作品はゆっくりと乾燥させます。
十分に乾燥させた後、素焼きを行います。
※窯には家庭用電気窯・コンパクト電気窯・プロ向けのガス窯・灯油窯などがあります。(比較的安価なものは7万円台からあります)
素焼きは本焼きのための準備段階です。窯の使用方法は機種によって異なりますので、説明書をよくお読みの上、注意事項を守ってご使用ください。
焼成をする
陶磁器の製造工程の最終段階として行われる、高温での加熱工程です。
素焼きの後、鉢に釉薬を塗って高温で溶かします。釉薬は陶器の表面をガラス質で覆って強化するもので、塗ることで鉢の表情が大きく変わります。
釉薬を塗る前に、お好みで着色剤を混ぜた色釉(いろぐすり)をかけたり、絵付けをしたりすることもできます。
家庭用電気窯やコンパクト電気窯で再び焼成します。
成形だけ行い、陶芸教室で焼いてもらうという方法もあるようです。お住まいの地域の陶芸教室に問い合わせてみるのもよいでしょう。
陶芸は土に触れ、慣れることがとても大切で、作り続けることが上達の近道と言われています。気分転換を兼ねて、ご自宅での盆栽鉢づくりにぜひ挑戦してみてください。
自宅でのスペースや作陶に不安がある方は、まず陶芸教室に通ったり体験に参加してみてから、ご自宅での盆栽鉢づくりを始めてみてはいかがでしょうか。
より気軽に盆栽鉢を……
家庭用オーブン陶土のご紹介
自宅で180度以下の低温焼成で実用強度が得られる特殊陶土を使えば、料理用オーブンで焼成できるため、気軽にオリジナルの盆栽鉢を作ることができます。
盆器の歴史
盆栽鉢をより深く楽しむためにも、盆栽鉢の変遷と歴史について触れておきましょう。盆栽の歴史ページでも一部ご紹介しています。
盆栽の歴史のページでも触れたように、839年、河内の国(現在の大阪府)の農民が自宅に咲いた橘の花を瑞徴(ずいちょう)と捉え、橘の木を土器に植えて仁明天皇(810〜850年)に献上したという記録が、平安時代に成立した歴史書『続日本後紀』に残されています。
藤原氏一門の繁栄を祈願するため春日明神から受けた加護と霊験を綴った絵巻物『春日権現験記絵巻』(推定1309年制作)には、蓮の葉文様が浮き出た青磁の鉢に載せられた盆山が描かれています。
平安後期の歌人・西行の生涯を描いた絵巻『西行物語絵巻』(13世紀後半の作)には、石付きの樹を木製の石台に飾る盆山が描かれています。
→鎌倉時代にはすでに盆山が成立していたと考えられています。
1976年に韓国・新安沖の海底から中国の貿易船が発見され、1323年付の東福寺宛荷札が付いた陶磁器が見つかりました。その中には中国・龍泉窯で焼かれた青磁の植木鉢が複数含まれていました。
京都市埋蔵文化財研究所には、京都市内の発掘調査で出土した青磁の植木鉢が所蔵されています。本来は水指であったものに孔を開けて植木鉢に転用したとみられ、同様の品が国の重要文化財に指定されている例もあります。
西本願寺に伝わる14世紀前半の絵巻物『慕帰絵詞(ぼきえことば・1351年制作)』には、瓦器と呼ばれる白い文様入りの灰色素焼きの器に白い玉砂が敷かれ、双幹・斜幹などが植えられた様子が描かれています。
室町幕府と禅寺の公式記録『蔭涼軒日録』には、八代将軍足利義政(1436〜1490年)の盆栽に関する記述が残されています。義政は盆栽を深く愛好し、使用された鉢も青銅や青磁製の方形・円形など格調高いものが多かったとされています。
将軍の命によって禅宗寺院から集められた「盆山」についての記述もあります。これらは石に植物を根付かせた「石付き盆栽」の原型と見なすことができるでしょう。
江戸時代には、他に類を見ないほど園芸文化が発展し、盆栽も町民から大名まで広く普及しました。特に大名の間では空前の盆栽ブームが巻き起こりました。
この時代には、『花壇綱目』『長生花林抄』『草木育種』など、園芸の手引書や解説書が数多く刊行され、知識の普及に大きく貢献しました。
各種園芸が盛んになったことで、食器や瓦などの生産地においても鉢が製造されるようになり、栽培・鑑賞用の鉢が次々と作られるようになりました。
中国からは植物栽培専用の鉢の輸入も始まりました。また、江戸時代の大きな特徴の一つとして、斑入り・矮小・変わり種など珍奇な樹草を愛でる風潮が挙げられます。
『草木錦葉集』や『草木奇品家雅見』は、珍奇な植物のみを集大成した図譜として知られています。
珍奇な植物を求める流行の影響もあってか、江戸時代の盆栽は「蛸づくり・篠づくり」といった特異な樹形が好まれ、鉢の種類も少なく、全体的に風格に欠ける傾向がありました。
京都・大阪地方では、俳人で南画家の与謝蕪村や国学者の上田秋成らが中心となり、中国の古典思想・学問・慣習を深く研究した文人趣味が生まれました。
束縛を嫌い自由を求めた知識人や、高い教養を持つ富裕な町人たちが集う煎茶の席では、盆栽が机上や床脇に飾られるようになり、席の雰囲気に合った風雅な盆栽が好まれるようになりました。
そのためか、江戸に比べ京都・大阪地方では盆栽の樹姿に品格があり、使われる鉢の種類も豊富でした。
江戸時代後期から明治期にかけては、煎茶会を記録した「茗讌図録」が多数刊行されており、当時の席でどのような盆栽が飾られていたかを知ることができます。
著名な南画家・田能村竹田の養子である田能村直入が著した『青湾茶会図録』(1863年刊)にも、盆栽についての詳細な記述が残されています。
盆栽 青玉小盆。水養石勝負生石者
盆栽 交趾窯。白磁方盆。養湖石小竹。有壇座
盆栽 交趾窯。海鼠色磁大盆。養石菖蒲。俗曰針舗。有壇座
上記の記録から、席には3つの盆栽が飾られ、鉢の色・種類、竹や菖蒲といった植物の種類まで詳しく読み取ることができます。
明治時代に入ると、現代盆栽の礎が築かれます。自然の景観を重視した「自然盆栽」が興り、針金かけによる整枝法が開発されたことが、現代の盆栽界に多大な影響を与えました。鉢についても探求と研究が深められていきます。
明治新政府の要人たちの間でも盆栽愛好の風潮が高まりました。東京でも煎茶が流行し始め、関西流の文人盆栽が好まれるようになります。財閥や各種企業の台頭とともに、これらの層にも盆栽が広く愛好されるようになりました。
煎茶から独立した盆栽は急速に普及し、新興の中小企業主や商店主たちが盆栽愛好会・研究会を結成しました。1900年頃には、自然の景観の中に樹形・樹姿を求める、現在の芸術的な盆栽の型が確立されました。
直幹・懸崖に加え、斜幹・双幹・根連なりなどの樹形が確立されたのもこの頃です。
盆栽熱が高まるにつれ、研究家たちは盆栽の風格を高めるべく研鑽を重ねました。その結果、栽培・観賞の両面において「泥物」の「支那鉢」が最も優れた鉢であるという結論に至りました。
明治中期以降、この鉢が広く普及しました。中国・宜興窯(江蘇省宜興近郊の陶窯)では、当時の日本の盆栽愛好家の注文に応じて盆栽鉢が製作されています。東京でも宜興鉢を模した朱泥鉢が大量生産されました。
江戸時代以前のものを「古渡り」、1890〜1920年代のものを「中渡り」、1920〜1940年代のものを「前新陶」または「新渡」、1945年以降を「新々陶」と呼んでいます。中国産鉢の輸入は盆栽の発展と大衆化に大きく寄与し、日本の盆栽鉢の発展も中国の技術から多大な影響を受けています。
明治・大正時代は盆栽文化の隆盛とともに、日本の生産者も先進国の技術を取り入れた作風のものを多数製作しました。常滑でも1893〜1894年頃から宜興風の盆栽鉢が作られるようになりました。大正時代には盆栽の大衆化がさらに進み、展覧会も活発に開催されるようになります。
盆栽ブームを支えるさまざまな専門誌が刊行されたのもこの頃です。1921年(大正10年)には「大日本盆栽奨励会」が発足し、機関誌『盆栽』を創刊。以降、関連書籍が多数刊行され、盆栽は芸術として広く認知されるようになりました。
盆栽が芸術として高められていく風潮に伴い、大正期から昭和初期の常滑では「大正常」と呼ばれる格調高い盆栽鉢が作られるようになりました。昭和には各地で権威ある展覧会が開催されるようになります。
1927年(昭和2年)には機関誌『盆栽』主催で「明治大正昭和盆栽銘品展覧会」が、1928年(昭和3年)には「全日本盆栽展」が日比谷公園で、1934年(昭和9年)には東京府美術館で「第1回国風盆栽展」が開催されました。こうした展覧会を通じて盆栽の芸術的地位が確立されていきました。
戦後の経済成長とともに、盆栽ブームも幾度か大きな波が訪れました。中国鉢の輸入が滞ったり品質が低下したりしたことで和鉢の需要が高まり、常滑などの産地も大きな恩恵を受けました。
常滑・四日市・瀬戸・信楽・京都など主要な焼き物の産地でも盆栽鉢の製作が盛んになり、著名な作家物も数多く生み出されました。
1980年代後半のバブル崩壊と経済低迷により盆栽愛好も下火となり、中国からはかつて常滑が模倣していたような古い様式の鉢が輸入されるようにもなりました。
世界の植物園と盆栽文化
昭和の盆栽ブーム期の生産量には及ばないものの、若い世代の愛好家も増加しています。現代の生活環境に合わせた小品盆栽・豆盆栽が流行し、小型の鉢を中心に生産が行われています。
海外でも「BONSAI」が広く認知され、世界各国に愛好家が生まれ、盆栽愛好会が結成されるほど普及しています。
それとともに、日本の盆栽鉢や産地も国際的な注目を集めています。
昭和時代に生産された和鉢の素晴らしさが再評価され、国内外の熱心な愛好家からの需要も高まっています。
鉢選びのポイント
最後に、鉢選びの要点についてまとめておきましょう。
最初はどの鉢に植え付ければよいか感覚がつかみにくいかもしれませんが、できれば実際にいくつかの鉢に載せてバランスを確かめてみましょう。迷った場合、鉢選びに厳格なルールはありませんので、直感や好みを大切にして選んでみてください。
盆栽の主役はあくまでも樹や草という生き物です。鉢は植物を育てる上で機能的に重要な役割を担います。鉢底に穴があり、高台や足がついていて、内側に釉薬がかかっていないものなど、通気性・排水性を考慮して選ぶようにしましょう。
経験を重ねながら機能面もクリアした上で、鉢と植物の「鉢合わせ」のコツをつかんでいきましょう。そのためには、優れた盆栽を数多く鑑賞し、樹だけでなく鉢の色・形・大きさ・深さにも注目して、鑑賞眼を養うことが大切です。
樹種や樹形による鉢合わせの例をご紹介しましたが、盆栽に限らずあらゆる分野において、セオリーを超えたところに生まれる美しさというものがあります。
盆栽の「鉢合わせ」も、最終的には直感で決めることになるかもしれません。直感で決めるからこそ、盆栽の本質を理解し、基本と伝統に裏打ちされたバランス感覚を身につけておくことが大切なのではないでしょうか。









