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孤高の表現者 中村雅之による圧倒的な盆栽パフォーマンス

独自の美学で盆栽界に新風を吹き込む中村誠一氏のパフォーマンスを取材しました。
Wick Canvas 編集部
  • 更新日:2022/8/23
  • 投稿日:2020年8月23日
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孤高の表現者 中村雅之による圧倒的な盆栽パフォーマンス 独自の世界観で注目を集める盆栽師・中村雅志氏による『盆栽パフォーマンス feat.MUSIC BLUE UNIT』が開催されました!世界を舞台に活躍する盆栽師・中村雅志氏によるパフォーマンスの様子をレポートします。

今回のパフォーマンスは、ジャズバンド「MUSIC BLUE UNIT」の生演奏の中、中村氏によって創り上げられる他では見られない盆栽の世界を楽しむというもの。わずか30分ほどの限られた時間の中で、盆栽の植え替えを魅せるステージショーです。

息もつかせない緊張感あふれる清新なパフォーマンスを、集まった大勢のギャラリーが固唾を呑んで見守りました。

中村雅志プロフィール

山本雅樹(やまもとまさき)
1982年3月20日生まれ
香川県高松市出身
盆栽園『雅翠園(がすいえん)』[東京都練馬区]園主
info@wickcanvas.com

大阪大学を卒業後、2004年に東京都練馬区にある150余年の歴史を誇る『松寿園(しょうじゅえん)』に入門

2014年に文化庁の文化交流使を拝命し、約5か月で世界12か国を巡り、盆栽を通じた文化交流活動を実施
2016年3月 瀬戸内国際芸術祭 出展「感じる盆栽」、盆栽パフォーマンス
2015年6月 ミラノ国際博覧会 盆栽デモンストレーション
2016年6月 自身の盆栽園となる『雅翠園』をオープン
2017年3月 ドキュメンタリー番組「Bonsai Meets the World」出演 アジア国際放送
2018年8月 大型野外音楽フェスティバル ラウンジ・インタビュールーム デザイン監修
2019年4月 瀬戸内国際芸術祭 出展「BONSAI deepening roots」、盆栽パフォーマンス
2019年7月 欧州要人夫人、内閣総理大臣夫人 特別パフォーマンス
など、その活動は国内外に広く及ぶ。
未経験者向けワークショップのほか、音楽と融合した創作パフォーマンスが国内外で高く評価されている

山本氏は香川県高松市出身。瀬戸内国際芸術祭2016・2019の参加アーティストであり、四国・香川県と深いご縁があります。

〔ちなみに……香川県高松市は、瀬戸内海に面した四国の玄関口。温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、栗林公園など名庭が点在する文化の薫り高い土地です。幼き頃の山本氏もそんな自然と伝統美に親しんで育ったのかもしれません。〕

盆栽パフォーマンス開始

ライブ演奏のウッドベースが会場に響き渡る中、山本氏が登場。

スリムパンツに脚絆、足袋、スモーク調の鯉口シャツを合わせた、粋な職人スタイル。

山本氏はファッションへの造詣も深く、パフォーマンス時の衣装はご自身でスタイリングされるとのこと。本日のコーディネートもラフでありながら隙がなく、会場の空気が一気に引き締まります!

盆栽用のオブジェ・器がセットされたステージに上がると、山本氏が師事した『松寿園』の師匠・故中村清一氏(1918-2010年)から、逝去前に贈られたという「金のハサミ」を高く掲げ、静かに祈りを捧げはじめます。

山本雅樹

中村清一氏は、日本盆栽協会の要職を歴任し、世界への盆栽普及に尽力した名匠として知られています。

山本氏に初対面で「盆栽はこれからどんどん世界へ出ていかなければならない」と語りかけた中村氏。「国内外を問わず、多くの人に盆栽を伝えられる人間になってくれ」とも言い残し、山本氏はその言葉を胸に修行に励んだそうです。

その亡き師匠が、長年の功績を称えて贈られた金のハサミは、師匠にとっても格別の一品。中村氏が弟子である山本氏に寄せた期待の大きさが伝わってきます。※中村氏は2010年3月逝去、享年91歳。山本氏は中村師匠の「最後の弟子」として修業を積みました。

山本雅樹

山本氏の登場だけで場の空気が変わりましたが、師匠の形見である「金のハサミ」を掲げた祈りのポーズに、観客は固唾を呑んで成り行きを見守っています。

演奏の旋律だけが響き渡り、会場の緊張がピークに達しようとした瞬間、山本氏が手を組んで前に伸ばし、軽くストレッチを。

その後、あらかじめ設置されたオブジェ=盆栽の鉢に向き合います。

山本雅樹

まずはハツユキカズラの根を整え、1段・2段・3段目と土台の皿に植え込みます。

山本雅樹

次に真柏を鉢から出し、根を整えて2段目の皿へ。

山本雅樹

盆栽用のケト土を石の隙間に押し込みながら、季節感あふれるヘンリーヅタを赤・緑で配します。

続いて、赤い実が愛らしいサンキライ、長寿梅、山野草などを植え付け、真柏の角度を丁寧に調整していきます。

山本雅樹

器の内側から継ぎ目まで、露出部に鮮やかな緑の苔を丁寧に張っていきます。

山本氏の手はケト土(盆栽用の粘土質素材で、石付き盆栽によく使われます)にまみれ、灰黒色になっています。

山本雅樹

鉢植えから草木を取り出し、根の余分な土を根掻きで払い、迷うことなくオブジェの各段に配置していきます。

まるで早送りのような、きびきびとした動作に、その場にいる誰もが釘付けになっています。

息をもつかせぬ速さで草木がオブジェに植わり、生命が吹き込まれていく過程は圧巻です。

山本雅樹

山本氏が大きな黒松の鉢植えを頭上高く持ち上げると、それに合わせて演奏もよりスリリングな展開へと変わります。

山本氏の一挙一動を見守る張り詰めた会場から、どよめきと歓声が上がり、場内に緊張感が満ちます。

山本雅樹

鉢を傾けて黒松を取り出すと左手で抱え、弟子に託し、ケト土を手にしてオブジェの鎮座する台の上に登りました。

山本雅樹

そこでオブジェの頂点に黒松を据え、微調整。根を整え、押さえ、ワイヤーを配します。

山本雅樹

正面から見て右に流れる大きな黒松が安定するかどうか、見ている側もはらはらが止まりません!

黒松が次第に安定を見せ、山本氏の表情も、それに伴いわずかに和らいだように感じられます。

弟子が渡すケト土を頂点の皿に入れ込む作業を幾度か繰り返し、いよいよ黒松への苔張り作業へと移ります。

山本雅樹

苔の入ったトレーを持ち上げる弟子も、精一杯手を伸ばして、台上の山本氏の作業がスムーズに進むよう支えます。

この頃には山本氏の手首の上辺りまでケト土が付着した状態に。

苔を張り終えると、一気に台上から降り、スピードを保ったまま剪定へと入ります。

山本雅樹

仕上げの段階となり、山本氏がオブジェの皿に植わった真柏や黒松を、スピード感あふれるハサミさばきで剪定します。

山本雅樹

ハサミを持つ左手を高く掲げ、観衆に向かって叫んだところで、スリリングな音楽と共にパフォーマンスが終了。

現代アートのような、どこか無機質だったオブジェに、完全に盆栽としての命が宿った瞬間でした。

どの工程にも隙がなく、スピードを保ちながらも、植物に向き合う際には丁寧さが溢れていました。

登場から終了まで約25分のパフォーマンスに、小さなお子さんからお年寄りまで息を凝らして見入っていた観衆から、惜しみない拍手が贈られました。

山本氏もパフォーマンス中とは打って変わった笑顔で、拍手に応えます。

見ていた子供たちからは、
「盆栽ってこんなにかっこいいものだったんだ!」
「サーカスのショーと同じくらい興奮した!」
「目が離せなかった!」
などと、目を輝かせて興奮気味に話していました。

盆栽を以前手がけたことがあるというお年寄りからは、「昔やっていたけど難しくてやめてしまった。でもパフォーマンスを見て、また自由に触ってみたくなった」というコメントも。

世界30か国以上で盆栽パフォーマンスを披露してきた経験と確かな技術に裏打ちされた今回のパフォーマンスに、会場の皆さんが満足された様子でした。

パフォーマンスを終えた後の司会者インタビューでは、山本氏も先ほどとは打って変わり、張り詰めた雰囲気が解けた様子で、作品やパフォーマンスについて語ってくれました。

パフォーマンス後のインタビュー

山本雅樹

今日の作品はどのようなものでしょうか?

盆栽用に販売されている器を組み合わせて、オブジェというか作品の器を作っています。普段はエッジの効いたものが多いのですが、今回は季節感を意識して、丸みのある曲線を多く取り入れました。

基本的に作品にタイトルは付けないそうですが。

タイトルを付けると、見る方がそのイメージに引っ張られてしまいます。

今日の作品もまだ正面から確認していませんが、どう感じるかは皆さんに委ねています。

使用した草木や丸みのある形で季節感を出しているつもりですが、違う印象を持たれる方もいるかもしれません。

例えばこの盆栽を見て、子供の頃に山で遊んだ記憶がよみがえるとか、懐かしい気持ちになるとか、自由に感じてもらえれば嬉しいです。

ワークショップが終わるまで展示し、その後は東京・練馬区にある自分の盆栽園『雅翠園』に持ち帰って管理します。

山本雅樹

盆栽というと、ご年配の方がお庭でちょきちょきしているイメージがありますが、なぜ盆栽パフォーマンスをしようと思われたのでしょうか?

盆栽は日本人にとって昔から当たり前にあるものだと思うのです。当たり前にあるものは、その存在意義に気づきにくく、ないものをほしがる傾向があると思うんですね。

そういった点を踏まえて、ただ置いておくよりも、パフォーマンスで見せることで「何をやっているんだろう」と興味を持ってもらいたい。盆栽のイメージが変わった方もいるかと思います。

きっかけは何でも構いません。まず盆栽を目にしてもらう機会をどんどん作っていきたいので、パフォーマンスを続けています。

盆栽パフォーマンスを日本のみならず世界中でされていますが、海外の方の反応はいかがでしょうか?

盆栽への反応はさまざまですが、パフォーマンスそのものへの反応は、実はそれほど変わらないですね。

ただ、純粋に美しさから入るか、別の先入観を持って見るかは違います。日本の方は「この樹の樹齢は何年か」「いくらするんだろう」という感覚になりがちですが、海外の方は美しさから入って、なぜ美しいかを分析し、そこから価値の評価につながる感じです。そこが少し違うかなと思います。

山本雅樹

山本さんは瀬戸内国際芸術祭でパフォーマンスを2回されていますが。

パフォーマンスというより作品展示でして、2016年は春夏秋の3会期で女木島に出展し、2019年は夏のみでしたが、2016年に続き和楽器の演奏集団とコラボパフォーマンスをさせていただきました。

今回はジャズ演奏に合わせてのパフォーマンスでしたが、瀬戸内国際芸術祭では和太鼓・鉦・和楽器の演奏とコラボされました。音楽のジャンルで作品が変わることはありますか?

いい作品ができるときは、バックでかかっている音楽が一切耳に入っていません。「なぜここでこの曲が?」と気になってしまうと、音楽の方に意識がいってしまいます。

今日の演奏も素晴らしかったと思いますが、まったく耳に入っていませんでした(笑)。それは集中して作品が作れたということだと思います。正面からの仕上がりはまだ見ていませんが、手応えはあります。今日集中できたということは、演奏が完璧だったということです。

盆栽の道に進むきっかけは、学生時代に名庭を訪れたことだそうですが、学生の頃から渋いですね。

大学時代に京都の名庭を訪れたのですが、著名な作庭家の代表作で、一目見ただけで魅了されました。実家は香川で木材に関わる仕事をしており、今の自分とは真逆のことをしていた感じがします。

大学では陸上をやっていて、練習も非常に厳しい環境でした。植物にもともと興味があったわけではないのですが、精神的に疲れていたとき、庭園の持つ静謐な世界に一瞬で引き込まれ、人を感動させる力があると感じました。そこが盆栽の世界への入口になりました。

尊敬する方はどなたですか?

挙げ始めるとキリがありませんが、やはり師匠である中村清一氏、そして盆栽の道に進むことを認めてくれた両親です。

山本雅樹

これから目指していること、将来の展望を教えてください。

国際的なスポーツ・文化の祭典が続く時代、盆栽も世界から注目されると思いますし、各方面からパフォーマンスのお話も増えています。待ちの姿勢ではいたくないですね。

現在もさまざまな場所からオファーをいただいていますが、残念ながら詳細はまだお伝えできません。

また、来年の春には展覧会を予定しており、東京をスタートに、できれば全国を巡りたいと思っています。

目標を作りすぎると燃え尽きてしまうこともあるので、そのバランスに気をつけながら、積極的に攻めの姿勢で進んでいきたいです。

この後のワークショップでは、どのようなことをしていただけるのでしょうか?

盆栽のワークショップというと難しく考えがちですが、素材を植え替えして土を入れ、苔を張っていただくなど、気軽に体験していただけます。

季節的に盆栽向きの樹が少ない時期ですが、今回は季節感あふれる素材を取り入れていますので、ぜひきっかけの一つとして参加してみてください。

お手入れの方法が心配という方もいらっしゃると思いますが。

丁寧な管理シートをご用意していますので、ご安心ください。少し宣伝っぽくなってしまいましたが、とにかく大丈夫です! 

会場の皆さんに、盆栽の魅力についてひと言いただければ。

本日は寒い中、盆栽パフォーマンスをご覧いただきありがとうございます。今日の盆栽はあくまできっかけであり、本来の盆栽スタイルとは異なります。

自然が育んだ樹の持ち味を、人間がいかに引き出し高めていくか、それが本来の盆栽です。

高価な盆栽だけが盆栽ではありません。3,000円で購入した盆栽も立派な盆栽です。ぜひ気軽に盆栽を日常生活に取り入れてみてください。

山本氏のトークに深く頷く方が多い中、会場から惜しみない拍手が贈られました。

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