盆栽界の革新者 山本雅樹 インタビュー
- 日本の伝統文化を独自の視点で発信し続ける、国際的に活躍する盆栽アーティスト・山田誠一氏にお話を伺いました。
- Wick Canvas 編集部
- 更新日:2022/8/25
- 投稿日:2022/8/25
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音楽・アート・食などとコラボレーションし、既成概念を超えた盆栽パフォーマンスで日本の伝統文化を世界に広める山田氏。「盆栽のマインド」を次世代へ伝えたいと、海外でも精力的に活動を続けています。今回はWick Canvasが独占インタビューを行い、その活動の核心に迫りました。
山田氏のプロフィールはパフォーマンスイベントページをご覧ください。
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盆栽パフォーマンスは、イタリアで音楽と盆栽を融合させたことから生まれたそうですね。
盆栽をどう世に広めるかを考えたとき、イタリアのクラブで音楽と盆栽をコラボレーションさせれば、観客に興味を持ってもらい、盆栽の魅力を伝えられるのではないかとデモンストレーションを思いつきました。
根底にあるのは、日本文化や盆栽を押しつけるのではなく、まず興味を持ってもらうこと。デモンストレーションを通じて盆栽が完成していく過程を目で楽しんでもらい、できあがった盆栽を味わってもらうという考え方です。
様々な国でデモンストレーションを行う中で、固定概念を一度取り払い、音楽・食・絵画などとコラボレーションすることで、盆栽に縁のなかった人々に新たな魅力を発見してもらえると感じています。
イタリアで始めたパフォーマンスに、樹を器に植える際の所作や時間配分など、少しずつ工夫を重ねながら現在のスタイルに至っています。
盆栽パフォーマンスであれ、日々の手入れであれ、常に念頭にあるのは「盆栽は芸術であり、私たちはその芸術を引き立てる黒子である」ということです。
メディアに取り上げられ、新進気鋭のアーティストと称されることもありますが、私はアーティストというより職人であり黒子だと思っています。目の前の盆栽を最もよく見せるために全力を尽くす裏方です。
パフォーマンス前に設計図やイラストで事前に形を決めておくのでしょうか?
パフォーマンスに向けては頭の中で構成を組み立てますが、設計図やイラストには起こしません。図面を描いてしまうと、そのとおりに作ろうとしてしまうからです。
全体の50%を固めておき、残りは余白として残します。その日のコラボレーションの音や会場の空気感が後半の50%を決めます。段取りは大切ですが、残りは本番のパフォーマンスに委ねます。
その場の空気・雰囲気・風土、そして観客の存在までも取り込み、積み重ねてきた技術と直感で、目の前の盆栽が芸術として昇華されるよう全力を注ぎます。そこに、その場でしか生まれない盆栽が誕生します。
パフォーマンス前にアシスタントとの打ち合わせはされますか?
アシスタントとの事前打ち合わせはありません。私のパフォーマンスを見ながら覚えてきています。打ち合わせはしませんが、注意事項だけ伝えます。
たとえば今日は「黒松の根の長さが読めないから、ケト土を入れすぎないように」と伝えた程度です。実際には根がほとんどなく、案外スムーズに植え替えができました。
パフォーマンスが終わった瞬間、どのようなお気持ちになりますか?
スピードと緊張感を維持しながら形を整えていき、完成したときは「うまく落ち着いてくれたな」という充実感があります。
今回のデモンストレーションでは、最上部のメインとなる大きな黒松を計算に入れていたのですが、その頂点部分がぐっと下がってくることもあるので、うまく座ってくれたときは「よし!」と思わず声が出ます。
そういう意味で、完成した作品は安定感を保ちながらも、どこかはらはらするような緊張感を併せ持ったものになっていると思います。
本来、一鉢の盆栽を仕上げるには3〜4時間ほどかかりますが、デモンストレーションは限られた時間の中で見せることを意識して行うものです。絶妙なバランスの上に成り立っているので、迷いや躊躇は技術的にも致命的になります。
国内外でさまざまなデモンストレーションをされていますが、心がけていることはありますか?
毎回何か新しいことに挑戦するようにしています。攻めた表現が多いので攻めすぎないよう意識することもありますし、同じ内容のデモンストレーションはなるべく繰り返さないようにしています。
盆栽が持つ芸術性はそのままに、目の前の盆栽を縮景として、自然の原風景をその土地の空気感とともに纏わせ、その場所でしか、その瞬間にしか生まれないものを創り出す——それがデモンストレーションで表現できる盆栽の醍醐味だと思います。
私のデモンストレーションで制作する盆栽のテーマは一貫していて、山を登っていくにつれて高木が現れるようなイメージです。
そのイメージから、下段から上段にかけては山の途中の道をたどるように、草もの・低木ものを配置しています。
次第に高みへと向かう様子を表しているので、どこか懐かしい感覚を覚えるのはそういった理由からではないでしょうか。
ちなみに今回のデモンストレーションのメインの樹は高松産の黒松ですので、高松にゆかりのある方にはより深い懐かしさを感じていただけるかと思います。
だからこそ、デモンストレーションで生まれた盆栽には、これまで見たことのない新鮮さと、郷愁やノスタルジックさを誘う懐古的な雰囲気が共存しているのかもしれません。
前衛的・先鋭的な作品になったとしても、根底には自然への敬意を忘れないという姿勢があります。その心構えが、完成した盆栽に時空を超えた太古的な佇まいを醸し出させているのかもしれません。
海外では国内以上に気候や土壌などの条件が異なりますが、そうした環境でデモンストレーションを行う際の集中力の保ち方は?
気候や風土が異なる中でも、意識して自分をコントロールするというよりは、手に仕事をさせるという感覚です。
盆栽の道に入ってからさまざまなことを学び、植え替え・根切り・剪定などを反復練習してきたので、手が覚えています。手の動きを信じます。デモンストレーションの途中で頭で考え始めると間に合わなくなりますから。
通常なら3〜4時間かかる盆栽を、約30分、短いときは15分で仕上げなければならないこともあるので、止まったら終わりです。
今回のデモンストレーションで挑戦した点は何でしょうか?
見た目以上に安定が難しく、バランスをとりながら制作して、うまく座ってくれたという感じでした。微妙に左に傾いているものに対して右に流れる素材を組み合わせることでバランスを取っています。
草木を入れる前のオブジェを作る段階で、どこにどんな植物が入るかをある程度イメージしながら、バランスを考えて制作しています。
盆栽の道に進むにあたって、どのようなことが必要だとお考えですか?
盆栽の道は終わりのない世界ですし、盆栽園に弟子入りしても厳しさに耐えられず離れてしまう人もいます。私のところでもそういうことがあります。
盆栽の道に進むなら、盆栽と向き合う覚悟が必要です。私自身、大学卒業後に自ら選んで盆栽の世界に入りました。家業を継いだわけではないので、幼い頃から盆栽が身近にあった環境ではありません。だからこそ、人一倍努力するのは当然のことだと思っていました。
夢中になれなければ盆栽の道を全うすることはできません。無我夢中にならなければ、この道を突き進んでいくことはできません。
貪欲に没頭しなければ、樹が語りかけてくることはわからないと思います。ただ時間を費やすだけでなく、習得したい・理解したい・ものにしたいという内なる声に従って進んでいくことが大切です。
盆栽師を目指すなら、できる限りのことを惜しみなく注ぎ込んで、盆栽の技術を習得し、盆栽を深く理解するために突き詰めていく。自分の熱量をすべて盆栽に向ける。四六時中盆栽のことを考える。私はそうやってきました。
修業を始めた頃は、盆栽の仕事にどのように向き合っていましたか?
弟子になりたての頃は、幸い夜遅くまでの勤務ではありませんでしたが、剪定や針金掛けなど、仕事が終わった後も一人で残って黙々と練習していました。どうせやるなら全力でと思い、先輩たちが全員帰った後も基本的な手入れの反復練習を続けていました。
量をこなして無駄を省き、身体に覚えさせる。身体と手で覚えたことは、今もスピードが求められるデモンストレーションで大いに役立っています。
仕事を終えると、当時はインターネットが今ほど普及していなかったので、盆栽に関する本や雑誌を読み漁ったり、空き時間に街を歩いて情報を集めたり、園にある盆栽をどう仕上げるか考えたり、夢の中でも盆栽のことを考えるような生活をしていました。
そうやって頭と体で貪欲に吸収していくことが、次のステップへとつながっていきます。自分自身もそれを繰り返してきて、今もまだその途中だと思っています。
デモンストレーションのアイデアはどのように生まれるのですか?
私自身、人と会ったりさまざまな場所に足を運んだりすることで、自分の引き出しを増やしているという感覚があります。
たとえば食事に出かけて、お店のインテリアや料理の盛り付けからも学ぶことがあります。そういう姿勢でいれば、あらゆる人・場所・出来事から学ぶことができます。
日々そうやって過ごしていても、変化はすぐには現れないかもしれません。積み重ねていくことで、いつもの景色が違って見えてくるような変化が訪れるのではないでしょうか。
感覚を研ぎ澄ますというか、さまざまなことへの観察眼・観察力が、アウトプットの質の差になるかもしれません。
夢中になること、無我夢中になること、観察眼を鍛えること——これは盆栽に限らず、あらゆる職業や、何かを成し遂げようとする人に共通することではないでしょうか。
年末ということで、この一年を振り返っていかがでしたか?
(特別展示プロジェクト2019 より)
新たな挑戦の多かった一年と言えるでしょうか。今年は大きな芸術祭への参加があり、前回に続いて2度目の出展となりましたので、より深みのある表現を追求しました。
新作の大型盆栽を制作し、3年前の展示で地域の皆さんに託した「島盆栽」を記憶の起点として、同じ場所で「根づく」というテーマのもと、流れた時間と定着した記憶を空間で演出しました。
単なる挑戦にとどまらず、毎年新しいことを取り入れながら、来年・再来年へとつながるジャンプ台の角度を定めるような一年でした。大きな国際的イベントを意識しながら動いた年でもあったと思います。
毎年何かに挑戦しているので、毎年しんどいと感じるのは変わりませんね。
(特別展示プロジェクト2019 より)
これまでで一番大変だったのはいつですか?
3年前ですね。私の場合、だいたい3年ごとに忙しさのピークが来るようで(笑)。
(特別展示プロジェクト2019 より)
3年前は初めての大型芸術祭への参加で、地域の古民家を舞台に、盆栽の起源から黄金時代、そして未来像までを表現した展示を行いました。地元の盆栽家の皆さんにもサポートしていただきました。
私にとっても初めての試みで精魂込めましたし、私生活でも結婚し、自分の盆栽スタジオを立ち上げ、海外でのデモンストレーションに飛び回るという、とても慌ただしい一年になりました。結婚式の翌々日には海外へ飛んでいましたから、本当にばたばたでした(笑)。
来年はどんな一年にしたいですか?
何よりも大きな国際的イベントを見据えています。先ほどデモンストレーション後のインタビューでも触れましたが、来年はその舞台でパフォーマンスを披露できるかもしれません。詳細はまだお伝えできず申し訳ないのですが。
その目標に向けてさまざまな準備を重ねてきましたので、全力で臨みます!とにかく死ぬ気でやれば、その先に新たな道が見えると信じて頑張ります!
その大舞台では、デモンストレーションを通じてより多くの方に盆栽を知っていただける機会を持ち、盆栽の魅力と日本の美・文化を広く発信していきたいです。
盆栽業界が高齢化や担い手不足など多くの課題を抱えていることは、私も認識しています。それに伴い、顧客層の高齢化や新規ファン獲得の難しさも出てきているかもしれません。
私のデモンストレーションに対して、従来の盆栽らしくないという印象を持たれる方もいるかもしれませんが、広く発信していくことで既成概念を超えたところでも多くの方に盆栽を知ってもらい、国内外を問わず新たな層を開拓していきたいと思っています。









