針金掛けの名手 翠松園・田中清志さん
- 針金の掛け方ひとつで、欠点に見える枝さえも魅力へと変える。
芸術性の高い職人技が生まれた背景とは?
- Wick Canvas 編集部
- 更新日:2022/8/25
- 投稿日:2022/8/25
- 盆栽園
- 高松盆栽
- 香川
- 高松
盆栽の成形において最も重要な工程となる針金掛け。その手法は作り手それぞれですが、職人と木の個性が相まって作り込まれる盆栽は、まったく異なる表情を見せます。今回は、針金掛けの技を極めた盆栽職人・田中清志さんにお話を伺いました。
この道50年の盆栽作家。数多くの受賞歴を持つ
祖父から三代続く「田中松寿園」で兄とともに7年間修業した後に独立し、「翠松園(すいしょうえん)」を立ち上げて40年余りになる田中清志さん。針金掛けの技を極めた、芸術性の高い盆栽作家として広く知られています。
盆栽は根張り・幹の流れ・枝付き・葉姿・古木感などで評価されますが、田中さんが成形の際に心がけるのは「樹木が生まれ持った個性をいかに引き出すか」ということ。一見欠点に見える枝に手を加えることで、思わぬ趣が生まれることもあるそうです。
「自然の山から採った木を盆栽に仕立てるのが、一番やりがいを感じます。自然と人との調和から、美しい盆栽が生まれるんです」と田中さんは語ります。
幼い頃から盆栽を見て育ち、それを仕事として50余年。小さな苗から松を育てた時期もありましたが、現在はほぼ仕入れた松柏類の改作を専門に手がけています。愛好家向けの講習会で講師を務めることもあります。
学んでも学んでも終わりがない代わりに、いつまでも興味深く楽しいと、盆栽と歩んだ半世紀を振り返ります。
植物として健やかだからこそ、造形の美が映える
盆栽を改作するには、植物としての健やかさと活力が不可欠です。そのために一年間の主な手入れの流れがあります。松の盆栽では、新芽が出る6月中旬に「芽切り」を行い、7月中旬には多数出た芽を2芽に厳選する「芽かき」をします。9〜10月は芽が揃い、松が最も美しく見える時期です。11月には前年の葉を取る「古葉取り」を行い、3月には「植え替え」や「葉すかし」を実施します。「葉すかし」は春に出た葉を5枚ほど残して他を抜くことで、翌春の芽が均一に出るよう促します。
季節ごとの作業に加え、日々のきめ細やかな手入れも欠かせません。これらを怠ると盆栽の元気がなくなり、冬場の針金掛けができなくなります。逆に言えば、丁寧な日常管理があるからこそ、「ジン」や「シャリ」を施した大胆な改作を行う田中さんの作品が、植物としても生き生きと輝くのです。


多様な考え方の職人がいるからこそ、文化が育まれる
田中さんが手がける盆栽は芸術性の高いものが多いですが、「黒松も雑木も、盆栽は盆栽。さまざまな人がさまざまな考えで向き合うからこそ、産地が栄え文化が生まれる」と、高松が愛好家にも初心者にも魅力ある盆栽の里であり続けることを願っています。今後は、作業場の一部を花ものや実ものの小さなショップにする構想もあります。









