盆栽施肥の基礎知識。肥料が樹に与える主な効果と活用法
- 肥料を上手に使いこなして、盆栽の成長を促進させましょう
- Wick Canvas 編集部
- 更新日:2022/8/25
- 投稿日:2022/8/25
- 基本の管理
- 初心者向け
実のところ、肥料がなくても盆栽がすぐ枯れるわけではありません。よく誤解されるのが「肥料は盆栽の食料だ」という考え方ですが、これは正確ではありません。肥料はあくまで補助的なもの。植物にとって水が主食なら、肥料はサプリメントのようなものです。より健やかに育てるために、肥料をどう活用するか一緒に考えてみましょう。
目次
- 章 肥料について
-
- 章 植物の構成成分
- 節 1. 植物の構成体
- 節 2. 必須元素一覧
- 章 肥料の種類
- 章 有機質肥料の種類
- 章 無機質肥料の種類
- 章 肥料の形態
- 章 肥料を自作する場合
- 章 肥料の用途
- 章 肥料の効き方
- 章 肥料の溶け方
- 章 施肥の方法
- 章 施肥の注意点
- 章 樹種別施肥の概要
- 章 樹種別肥料
肥料について
鉢の中で小さく育てる盆栽では、吸収できる水分や養分に限りがあります。適切な水やりはもちろん欠かせませんが、肥料も盆栽の健やかな成長を支える重要な要素です。
自然の樹木や庭木は地中に広がった根から養分を吸収しますが、盆栽は限られた鉢土のみに頼ります。そのため、肥料の量が樹の状態に大きく影響します。
水やりを頻繁に行うため、養分が水に溶けて鉢穴から流れ出してしまいます。土の量も少なく盆栽用土に含まれる養分も限られるため、放置すると栄養不足になりかねません。
肥料が不足すると花が咲かなくなったり、葉が黄色く変色したりします。一方で与えすぎると枝が徒長したり葉が大きくなりすぎたりして、樹形づくりに悪影響を及ぼします。
根が傷んで樹勢が衰えている樹に肥料を与えても、養分を吸収できないだけでなく根腐れを促進し、最悪の場合は枯れてしまうこともあります。
単に不足分を補えばよいという単純な話ではなく、与えすぎや肥料切れを防ぐために、環境や樹種を考慮しながら各肥料の特性を理解して、的確に施肥するようにしましょう。
植物の構成成分
植物は太陽光エネルギーを利用して、水と二酸化炭素から炭水化物を合成し、同時に酸素を大気中に放出しています。
(※光合成の詳細については、水やりに関するページをご覧ください。)
植物の構成体
植物細胞は主にタンパク質から構成されており、タンパク質の合成には炭水化物のほか、窒素やリンなどの元素が必要です。
植物は約60種類の元素から成り立っており、そのうち16成分が必須元素とされています。16成分には炭素・酸素・水素のほか、三大元素と呼ばれる窒素・リン酸・カリウム、さらにカルシウム・マグネシウムなどの中量元素3種、ホウ素・鉄・マンガンなどの微量元素7種が含まれます。
必須元素一覧
空気と水の中に多量に含まれる元素
炭素(C) 大気中から摂取 生命体の構成元素
酸素(O) 大気中から摂取 生命維持に不可欠
水素(H) 大気中から摂取 水の構成元素
三大元素
窒素(N)
タンパク質・葉緑素・核酸などの構成元素で、植物の生育に最も基本的な栄養素です。葉・茎・根・実など植物全体の成長を促進し、他の栄養素の働きを助けます。葉の緑色を豊かにする効果から「葉肥」とも呼ばれます。
不足した場合
原形質や葉緑素の生成が減少し、全体的に生育が悪化して株が貧弱になり、葉全体が黄色くなります。結実にも悪影響が出ます。
過剰な場合
葉が増えすぎて色が濃くなりすぎ、枝葉が軟弱に伸びて病害虫の被害を受けやすくなります。開花や結実にも悪影響を及ぼします。
リン酸(P)
核酸(DNA)・酵素の構成元素で、開花・結実・根の伸長・発芽・花芽の形成を促進します。細胞分裂が盛んな茎や根の先端に多く含まれ、細胞膜の構成成分として糖類と結合し、植物体内の呼吸作用にも役立ちます。「花肥・実肥」とも呼ばれます。
不足した場合
初期の生育や葉色が悪化し、花数が減少して開花・結実に支障が出ます。急激に欠乏すると葉が小さく茎も細くなります。
過剰な場合
過剰症は出にくいですが、極端に多い場合は草丈が伸びず生育不良となります。
カリ・カリウム(K)
植物体の直接の構成成分ではありませんが、タンパク質や炭水化物の合成・移動・蓄積などの化学反応を促進する補酵素として働きます。根からの水分調節に関与し、根の育成を促進。耐乾性・耐病性を高める作用から「根肥」とも呼ばれます。
不足した場合
水分の調節機能が低下してしおれやすくなります。発芽不良や葉の暗緑色化、根腐れが起きやすくなります。
過剰な場合
過剰症は出にくいですが、草丈が伸びず生育不良となります。
中量元素
カルシウム(Ca)
多糖類のペクチンと結合して細胞壁を強化し、病害虫への抵抗力を高めます。植物体内で生じる老廃物(シュウ酸やペクチン酸などの有酸物)を中和し、土壌改良にも役立ちます。
不足した場合
植物の正常な生理作用が阻害され、葉色が淡緑色になり、根の生育が悪化して根や葉の生長点が枯れるようになります。
過剰な場合
過剰症は出にくいですが、土壌が強アルカリ性になり、鉄・マンガン・ホウ素などが不溶性となって吸収できなくなります。
マグネシウム(Mg)
葉緑体の生成に欠かせない重要な構成成分です。リン酸の代謝にも関与し、炭酸同化作用と植物体内でのリン酸移行に重要な役割を果たします。細胞分裂やタンパク質合成にも有用で、肥料用語では「苦土」と呼ばれます。
不足した場合
葉緑素の形成が妨げられ、葉脈の間が黄色く変色したり、樹種によっては生育不良となったりします。
過剰な場合
生育障害が現れ、ホウ素・マンガン・亜鉛などの吸収が阻害されて欠乏症が誘発されます。
硫黄(S)
植物体を構成するいくつかのタンパク質の構成成分のひとつです。通常は土壌中に十分含まれています。
不足した場合
全体的に葉色が薄くなって生育不良となります。古い葉は特に黄色くなり、窒素欠乏に似た症状が現れます。
過剰な場合
過剰症は出にくいですが、極端に過剰になると土壌が酸性化し、窒素・リン酸・カリなどの吸収に障害が出ます。
微量元素
ホウ素(B)
非金属元素で、カルシウムの吸収を促進します。細胞壁を強化し、根や新芽の生育促進、細胞分裂や受粉などに関わります。
不足した場合
細胞膜の形成が悪くなり、水分とカルシウムの吸収に悪影響が出ます。生長点が止まり、根や新芽の生育も悪化して、部位的に黒変することがあります。
過剰な場合
葉の色が黄色や茶色に変色します。
鉄(Fe)
葉緑素の生成に関与し、マンガンと連携して葉緑素のタンパク質と結合し酸素を運びます。代謝や呼吸に関わる酵素の構成成分でもあります。
不足した場合
土壌がアルカリ性に傾くと鉄欠乏症が起こりやすくなります。若葉の葉脈間が黄色や白色になり、根が黄色く変色しやすくなります。
過剰な場合
根が発育不良となり、マンガンやリン酸の吸収が阻害されます。
マンガン(Mn)
微量元素の中で植物体内に最も多く含まれる元素です。光合成・鉄代謝・ビタミンCの合成・葉緑素生成などに必要です。
不足した場合
古い葉から症状が現れ、鉄欠乏に似た症状で葉脈の間が黄色くなります。実物では果実の着色不良が起こります。
過剰な場合
葉に褐色の斑点が現れ、根が黒く変色します。実物では樹皮が荒れてひび割れが生じたり、鉄欠乏症が誘発されたりします。
亜鉛(Zn)
各種の酸化還元酵素やタンパク質・でんぷんなどの合成に関わります。葉緑素や成長ホルモンの生成にも関与しています。
不足した場合
生育不良となり成長が止まり、葉も小さいままになります。葉脈の間も黄色く変色します。
過剰な場合
新しい葉が黄色くなったり、褐色の斑点が出たりします。
銅(Cu)
酸化還元酵素の構成成分として呼吸作用に関わります。葉緑素の形成にも間接的に関与し、タンパク質・炭水化物の代謝にも有用です。
不足した場合
新しい葉の先端が白くなってしおれてきます。枝枯れや新梢が伸びずに萎縮することもあります。
過剰な場合
根が発育しにくくなります。
モリブデン(Mo)
レアメタル(希少金属)の一種です。植物においては各種タンパク質の生成に関わり、窒素代謝に役立ちます。
不足した場合
古い葉で葉が湾曲したりよじれたりします。
過剰症は現れにくいですが、葉が白化することがあります。
塩素(Cl)
各種炭水化物の合成や光合成、作物の成熟に関与しています。繊維化作用を高め、病気の抑制に働くとも言われています。
不足した場合
新しい芽が黄色く変色したり、葉の先端が枯れたりします。
過剰な場合
リン酸が吸収されにくくなり、土壌が酸性に傾きます。
炭素・酸素・水素以外の13元素は主として土壌から供給され、水に溶けた状態で根から吸収されます。
上記の元素のほとんどは土中に含まれており、雨や水やりによって補給されるため比較的問題になりにくいですが、三大元素である窒素・リン酸・カリウムは植物の生育に多量に必要なため、肥料で補うようにします。
肥料は樹種や種類だけでなく、天候・環境・水やり・植え替えなども微量元素の補給に大きく影響します。
肥料の種類
肥料は一般的に有機質肥料と、化学的に合成された無機質肥料(化成肥料)に分けられます。
有機質肥料は土中の微生物によって無機質に分解された後に植物に吸収されるため、施してから効果が出るまでに時間がかかる遅効性肥料です。一方、無機質肥料は水に溶けてすぐに効き目が出る速効性のものが多くなっています。
盆栽では主に有機質肥料が用いられます。
有機質肥料
自然界の物質を原料とする肥料
油かす・骨粉・牛ふん・鶏ふん・魚かす・草木灰など
長所
ミネラルやビタミンを豊富に含み、吸収されやすく、与えすぎても大きな失敗につながりにくい点が特長です。土壌の微生物によって分解されるため、土壌改良にも役立ちます。
短所
自然由来のため独特の匂いがあり、カビが生えたり虫がわいたりすることがあります。効果が出るまでに時間がかかり、比較的高価です。
無機質肥料
化学的に製造された化学肥料です。
尿素・熔成リン肥・硫安・過リン酸石灰など
長所
有機質肥料と異なり成分が明記されているため調整がしやすく、大量生産が可能で入手しやすいです。臭気がなく持ち運びや施肥も簡単です。
短所
効果が強く現れるため、使用方法や量を誤ると植物にダメージを与える恐れがあります。速効性のものから緩効性の製品まで幅広くあります。
有機質肥料の種類
油かす
菜種や大豆など油分を多く含む種子から油を搾り取った後に残る絞りかすのことです。
原料となるもの:菜種・大豆・綿実・落花生・ゴマ・亜麻仁・椿・米ぬか・ヤシなど
数ある種類の中でも菜種油かすが最も一般的で、窒素含有量が多くリン酸やカリウムも適度に含んでいます。油かすは種類や商品によって成分量に幅があります。
油かすの標準含有成分量
肥料名 窒素 / リン酸 / カリウム
菜種 5〜6 / 2 / 1
大豆 7 / 1 / 2
綿実 6 / 2 / 1
落花生 6 / 3 / 1
ゴマ 6 / 2 / 1
亜麻仁 5〜6 / 2 / 1
ひまし 5〜6 / 2 / 1
米ぬか 2〜3 / 5 / 1
油かすはバクテリアなどによってタンパク質がアンモニアや硝酸に分解され、水に溶けて植物に吸収されます。この過程は徐々に進むため、肥料の効き目(肥効)に持続性があります。
施し方
単独で使用する場合は、水で練って小さな団子状にして乾燥させ、鉢土の上に置く「置き肥」が一般的です。水で溶いて腐らせた「水肥」として与える方法や、粉末のまま施す方法、団子状にしてすぐ与える方法もあります。
骨粉
一般的には鶏や豚の骨を粉砕して高熱で蒸製したものを指し、「蒸製骨粉」と呼ばれます。他にも生の乾燥骨を粉砕した「生骨粉」、内臓・くず肉・血液なども混ぜて粉砕乾燥させた「肉骨粉」などがあります。
骨粉の標準含有成分量
肥料名 窒素 / リン酸 / カリウム
蒸製骨粉 2〜3 / 20 / 1未満
生骨粉 3〜4 / 20 / 1未満
肉骨粉 5〜8 / 6〜10 / 1未満
施し方
単独で使用されることは少なく、リン酸を多く含むため、油かすや草木灰などと配合して施肥します。使用の際はふるいで粗い部分を除き、粉状のものを油かすに混ぜて団子状にします。
牛ふん
牛のふんにわらやおがくずを混ぜて発酵させたものです。窒素・リン酸・カリウムをバランスよく含みますが、鶏ふんと比べて含有量は半分以下です。肥料成分が穏やかなため肥料焼けを起こしにくく、鶏ふんに比べて臭気も少ないのが特長です。
施し方
肥料成分をほとんど含まないため、油かすや草木灰など他の肥料と配合して使用します。
鶏ふん
鶏のふんを乾燥させて作った有機肥料で、他の動物性堆肥と比べて窒素・リン酸・カリウムの三要素を豊富に含んでいます。原料のままでは大きさにばらつきがあり、羽毛や雑草が混入することもありますが、市販品は粒が均一で熱処理済みのため、清潔で扱いやすくなっています。
施し方
油かす団子に混ぜると使いやすくなります。油かすと鶏ふんを同量ずつ配合して作りましょう。化成肥料に近い速効性があるため、施肥量には十分注意してください。
魚粉
魚を乾燥させて粉末状にした肥料で、水産加工の際に生じる副産物を活用しています。「魚粕(さかなかす)」とも呼ばれ、窒素とリン酸を多く含む一方、カリウムが少ない点が特徴です。
施し方
油かす・米ぬか・骨粉などと合わせて水で練り、団子状にしてから約1週間置いて発酵・乾燥させます。
草木灰
わらや落ち葉、枯れ草などを燃やした後に残る灰で、粉状または粉末状です。古くから手軽に自作できる肥料として親しまれてきました。主成分はカリウムで、リン酸や酸化カルシウムも含みますが、窒素は含みません。
施し方
窒素を含まないため、窒素が豊富でカリウムが少ない油かす・鶏ふん・魚粉などと組み合わせると、肥料バランスが整います。
バイオゴールド
窒素・リン酸・カリウムに加え、カルシウムやマグネシウムなど天然のミネラル成分を豊富に含んでいます。高温処理済みで清潔感があり、気になりにくい程度の匂いです。
施し方
十分に発酵させているため、根に近い場所でも比較的安心して使えます。株を充実させたい場合や花・実を多くつけたい場合は、やや多めに与えると効果的です。
有機質肥料の標準含有成分量まとめ
肥料名 窒素 / リン酸 / カリウム
油かす(※平均値)5〜6 / 1〜2 / 1〜2
骨粉(※平均値)4 / 17〜20 / 0
牛ふん 2 / 2 / 2
鶏ふん 3〜4 / 2〜3 / 2〜3
魚粉 7〜8 / 5〜6 / 1
草木灰 0 / 3〜4 / 7〜8
バイオゴールド 4〜6 / 5〜7 / 3〜4
無機質肥料の種類
ハイポネックス
窒素・リン酸・カリウムをはじめ、植物の生育に必要な15種類の栄養素をバランスよく配合した液体肥料です。汎用性が高く入手しやすいため、盆栽の施肥にも広く活用されています。
施し方
ラベルの表示を参考に、原液を水で希釈し、1〜2週間に1回程度、株元に与えてください。
IB化成
化成肥料の中でも緩行性に分類されるもので、じっくりとゆっくり効き、植物にはアンモニア態窒素として吸収されます。粒を指で押してつぶれるようになったら、効果が切れたサインです。
施し方
小さな鉢には3〜4粒、大きな鉢には7〜8粒を目安に、植物の状態を見ながら2〜3か月に1回程度施肥します。
マグアンプK
粒状で肥料効果が長く持続します。植物の生育に必要な成分をバランスよく配合した緩行性肥料です。粒の大きさによって持続期間が異なり、土に混ぜ込むか鉢土の上に置いて使用します。
無機質肥料の標準含有成分量まとめ
肥料名 窒素 / リン酸 / カリウム
ハイポネックス 6 / 10 / 5
IB化成 S110(内IBチッソ)/ 10 / 10
マグアンプK 6 / 5 / 3〜4
メネデール
微量元素である鉄をイオン状態で含む水溶液で、素早く吸収されます。厳密には肥料ではなく活性剤として機能し、水分・養分の吸収を高めたり光合成を促進したりする効果があります。
施し方
表示の希釈倍率100倍(50〜200倍)を目安に、週1回程度使用します。肥料ではないため、水やりと兼ねて薄めたものを与えても問題ありません。
肥料の形態
固形肥料
粒状・粉状などの固形タイプの肥料です。効果はゆっくりで持続性があります。油かすや骨粉などを固めた有機質肥料と、窒素・リン酸・カリウムを化学合成した無機質肥料に分かれます。盆栽でよく使われる玉肥も固形肥料に含まれます。
玉肥
置き肥として作られた団子状・角状の肥料です。急激に分解されず効果が長続きするため、盆栽の肥料として最もよく利用されています。
粉肥
粉末状で施肥しやすい形態です。市販の粉肥には骨・魚・油かすなどを粉末にしたものがあります。油かすは単体でも使えますが、骨粉・魚粉などは規定量を守り他の肥料と混合して使用します。
液肥(水肥)
液体状の肥料の総称です。原料が粉末や固形でも、施肥時に溶かして液状にしたものも含みます。速効性に優れています。
肥料を手作りする場合
玉肥の作り方
【用意するもの】
油かす
水 適量
混ぜるための容器
蓋付きポリ容器・バット
①粉状の油かすに水を加えてよく練ります。水の量は、握ったときに少し水が出る程度が目安です。
②①を蓋付き容器に移し、時々かき混ぜながら1〜2週間発酵させます。(夏場は1週間程度)
③発酵させたものを手で握り、直径2〜3cmの団子状に丸めてバットや板に並べ、天日でしっかり乾燥させます。
三大栄養素(窒素・リン酸・カリウム)をバランスよく補うため、油かすに骨粉や草木灰を少量加えたり、液肥を混ぜたりして作る方法もあります。
液肥の作り方
【用意するもの】
油かす
水
混ぜるための容器
蓋付きポリ容器・バット
①粉状の油かす1に対し、水10の割合で加えます。
(※リン酸・カリウムを補うため、骨粉や魚粉を2〜3割程度混ぜる場合もあります)
②容器に入れてよくかき混ぜ、蓋付きのポリ容器やバットに移します。
③直射日光を避け風通しのよい場所に置き、時々かき混ぜながら1〜2か月発酵させます。(夏は半月程度、冬は3か月程度かかることもあります)
④完成したら上澄み液を取り出し、10倍程度に水で薄めて使用します。
↓
ペットボトルでも作れます!
【用意するもの】
油かす
水
ペットボトル
①の工程は同じです。
②ペットボトルの蓋を閉め、油かすと水がよく混ざるよう上下に振ります。よく混ざったら蓋をゆるめます。
③の工程は同じです。混ぜる際は蓋を閉め、混ぜ終わったら蓋をゆるめておきます。
④の工程も同じです。
※リン酸・カリウムを補うため、油かすに骨粉・魚粉・草木灰などを加えて作る場合もあり、樹種や樹の状態に応じて使い分けます。
液肥を加えてオリジナルの玉肥を作る愛好家もいます。自分だけの配合で盆栽を健やかに保てれば、育成の喜びもひとしおです。
肥料の用途
植物の成長段階に合わせて最適な肥料を選ぶと、元肥・追肥・置き肥など7種類に区分されます。成長の状態に応じた適切な時期に、適量を施肥するよう心がけましょう。
区分と用途
元肥(もとごえ)
植え付け前に土と混ぜ込む肥料で、植物が元気に育つための基礎となる養分を供給します。
追肥(ついひ)
植物の生育状態に応じて、必要な養分を追加で補う施肥のことです。
置き肥
生育期間中に養分を補うために置く肥料です。ゆっくり効いて植物に養分を届けます。
お礼肥
開花や結実後に疲弊した株を回復させるために与える肥料です。
寒肥
休眠中の冬季に、翌春に向けて養分を補うために施肥します。
芽だし肥
春先に力強い芽を出させることを目的として施す肥料です。
肥料の効き方
肥料には効果がゆっくり持続するものと、すぐに現れるものがあり、前者を緩行性肥料、後者を速効性肥料といいます。さらに効き目が遅いものを遅効性肥料と呼びます。用途・樹種・成長速度・植物の状態などに応じて使い分けましょう。
緩行性肥料
施肥後に効果が現れ始め、一定期間にわたって持続する肥料です。三要素(窒素・リン酸・カリウム)の効果が安定して続くものと、特定成分のみ持続するものがあるため注意が必要です。元肥・追肥の両方に使用でき、急激に溶け出さないため環境にもやさしい肥料です。緩行性肥料には2つの分類があります。
・緩行性成分を使用した肥料
無機質肥料・ク溶性・不溶性(※詳細は肥料の溶け方をご参照ください)に水溶性原料を混ぜた肥料を指します。使用成分によって持続期間が異なり、特定成分のみ緩行性のものもあります。
・被覆肥料
肥料の表面を水の浸透が遅い被膜でコーティングした肥料です。コーティングの厚さによって成分が溶け出す期間を調整でき、成分が均一に浸透していきます。
油かす類・骨粉・鶏ふん・魚かすなどは緩行性肥料に分類されます。
速効性肥料
含有成分がすぐに水に溶けて吸収され、速やかに効果が現れる肥料です。固形では水溶性の無機質肥料(硫安・尿素など)が該当しますが、家庭園芸では液肥が主流です。水やりで流出しやすいため、効果は1週間程度です。
施肥頻度は多くなりますが、施肥後すぐに植物に吸収されるため管理しやすい利点があります。追肥にも広く活用されます。
肥料の溶け方
肥料の生産業者保証書や販売業者保証票に記載されている「水溶性」「ク溶性」などの溶け方の区分について解説します。
水溶性成分
水に溶ける肥料成分のことです。植物がすぐに吸収できる、即効性の高い成分です。
ク溶性成分
水には溶けませんが、2%クエン酸液で溶ける肥料成分です。徐々に溶け出すためゆっくりと効きます。
可溶性成分
水には溶けませんが、ある程度の溶媒に溶ける成分を指します。根から出る根酸で溶け、比較的早く植物に吸収されます。
不溶性成分
土中の微生物や発酵によって分解された後に植物が吸収するため、効果が現れるまでに時間がかかります。酸でも溶けません。
施肥の仕方
年間を通じて、生長が盛んな時期とそうでない時期があります。樹種によっても生長速度に違いがあります。
マツ類は5〜6月に最も生長し、その後はほとんど生長しなくなり、冬には休眠状態に入るものもあります。
スギやヒノキなどの松柏類は春から6月にかけて生長し、夏の7〜8月に一時的に生長が止まり、秋の9〜10月に再び生長して、冬になると再び休眠します。
樹種ごとの生長パターンをよく理解した上で、肥料の種類・施肥時期・量を適切に見極めましょう。
施肥の注意点
時期を考える
冬季はほとんどの樹が休眠期に入り活動が止まるため、肥料は不要です。夏も生長が緩やかな時期のため、施肥は控えめにします。雨の多い時期は肥料が流出したり、植物が徒長したりするため、屋外の盆栽への施肥は避けましょう。
花芽分化期に肥料を与えると不要な生長を促してしまいます。結実後は実がある程度安定するまで施肥を控えます。植え替え直後は根が傷んでいるため、肥料は与えないようにしましょう。
【施肥を避ける時期】
冬季
雨が多い時期
花芽分化期
結実後
植え替え直後
樹の状態を把握する
盆栽の基本は樹が健康であることです。弱っているときに肥料を与えるべきか否か、また元気だからといって過剰に施肥すると肥料やけを起こすこともあります。それぞれの樹の状態をよく観察しながら施肥しましょう。
肥料の規定量を守る
肥料のラベルや使用説明書をよく読み、樹種・時期に応じた必要量を把握した上で、量・頻度・方法を守って施肥します。希釈が必要な場合は、必ず指定の希釈倍率を守ってください。
水やりをきちんと行う
鉢土が乾燥しているときは肥料成分が行き渡らなかったり、根が肥料やけを起こしたりすることがあります。必ず水やりをしてから施肥しましょう。
樹種別の施肥概要
松柏類
秋の施肥が翌年の樹の生長を左右するとも言われています。常緑樹は年間を通じて葉があるためいつでも施肥できると思いがちですが、基本的には生育が始まる早春から梅雨入りの6月頃までに2〜3回施肥します。
夏は施肥を控え、8月下旬から10月頃にかけて再び2〜3回施肥して生長を促します。冬は葉があっても休眠状態のため、肥料は与えません。
肥料の種類
油かす単体でも問題ありませんが、樹形が整った樹には骨粉や魚かすを少量混ぜると、枝葉がより生き生きとします。
油かすは鉢土に半分埋め込むように置き、四隅から少し離した位置に施肥しましょう。
葉物類
松柏類と異なり生長期と休眠期がはっきりしていますが、施肥の基本的な考え方はほぼ同様です。
発芽する早春から生長が盛んな梅雨頃までに2〜3回施肥し、充実期である9〜10月に翌春に向けて養分を蓄えるため1〜2回施肥します。
枝葉を必要以上に肥大させないよう、少量を数回に分けて施肥する方が効果的で、樹への負担も軽減できます。
肥料の種類
松柏類と同様に油かす単体でも構いませんが、紅葉を楽しんだり樹形を整えたりしたい場合は、草木灰や骨粉を1〜2割程度混ぜてリン酸・カリウムの比率を高めると効果的です。
花物類
花物盆栽の施肥は開花時期によって異なりますが、基本的には発芽期に行い、開花中は控えめにします。梅雨入りまでに2〜3回施肥し、花芽分化期の夏は中断して、9月から晩秋の11月上旬までに1〜2回施肥します。
花芽をつける生育期に施肥しすぎると枝葉ばかりが伸び、花の色や形に悪影響を与えることがあるため注意が必要です。
花芽分化期一覧表
種類 / 花芽分化期 / 開花時期
桜 / 6月〜8月 / 翌年3〜4月
長寿梅 / 8月 / 翌年1〜3月
フジ / 6月中旬 / 翌年4〜5月
睡蓮木 / 3月 / 5月〜10月
サツキ / 6月〜8月 / 翌年5〜6月
香丁木 / 3月 / 4月〜6月
白丁花 / 3月 / 5月〜10月
百日紅 / 6月〜8月 / 7月〜10月
銀梅花 / 8月 / 翌年6〜7月
椿 / 6月〜7月 / 12月〜翌年4月
野イバラ / 4月 / 5月〜6月
紅紫檀 / 7月〜9月 / 翌年5〜6月
あじさい / 10月 / 翌年6〜7月
木瓜 / 8月下旬〜9月上旬 / 10月下旬〜翌年4月
肥料の種類
油かすに骨粉を3割程度混ぜたものを使用します。窒素・リン酸・カリウムが均等に含まれる配合が花物類に適しています。
実物類
花と実の両方を鑑賞する樹種は特に注意が必要です。開花後に結実が始まった頃に肥料が効いてくると芽が伸び始め、結実に悪影響を及ぼすことがあります。
開花までの施肥は花物類と同様ですが、結実後は実がある程度大きくなり安定してから、少しずつ与えて実を充実させていきます。
肥料の種類
窒素に対してリン酸とカリウムが多くなるよう、油かす5〜7割・骨粉3〜5割程度に配合します。
樹種別の肥料ガイド
松柏類
黒松・錦松
油かすを主体とした固形肥料
真夏と冬を除き、おおむね隔月に置き肥を施します。春(3月頃)は少量から始め、梅雨明けの8月下旬頃に与え、秋(10月頃)はたっぷり施します。樹勢を高める目的で、6月下旬〜7月上旬の芽切り前1〜2週間に液体肥料を補助的に活用します。
赤松
油かす7割・骨粉3割を配合した肥料
真夏・梅雨時・冬を除き、月1回を目安に置き肥を施します。比較的樹勢が出にくい場合があるため、様子を見ながら管理します。
五葉松
油かす7割・骨粉3割を配合した肥料
肥料をしっかり与えて樹勢を整えます。春(4月・5月)に各1回、夏(7月上旬)に1回、秋(9月下旬〜10月上旬)に1回、計4回施肥します。
エゾマツ
油かす8割・骨粉2割を配合した肥料
真夏と冬を除き、芽吹き前の3〜5月に各1回、秋は9月・10月に施肥します。葉色が優れない場合は4月にハイポネックスを試してみましょう。
杜松
油かす8割・骨粉2割を配合した肥料
4〜10月の生長期は次々と新芽が伸びるため、夏と梅雨時を避けて月1回肥料を与え、樹勢を維持します。頻繁に施肥する場合、置き肥の効果は約1か月で薄れますので、古い肥料を取り除いてから新たに施します。
スギ
油かす8割・骨粉2割を配合した肥料
春から秋の生長期は真夏を避けて月1回、春(4月・5月)・7月・9月の計4回施肥します。葉色が悪い場合は4〜9月の間に一度、油かすの代わりにハイポネックスを与えてみてください。
真柏
油かす7割・骨粉3割を配合した肥料
生長が旺盛なため、若木でなければ肥料は控えめにします。3〜5月に各1回、梅雨明けに様子を見て1回、9〜10月に1回施肥します。充実した樹であれば春と秋に1回ずつでも十分です。
葉物類
モミジ・カエデ
油かすの置き肥、または水肥・化成肥料。油かすに骨粉・草木灰などを混ぜた配合肥料も適しています。
芽吹きから6月中旬頃までに月1〜2回施肥します。最初は量を少なく・濃度も薄めにして、徐々に増やしていきます。
ケヤキ
油かすのみの肥料。
芽が伸び始めた春先から肥料を与え、5〜6月上旬の葉刈り前に樹勢をつけるため1回施肥します。梅雨〜夏は肥料を控え、9〜10月に1回与えます。枝先の繊細さが鑑賞の見どころですので、与えすぎに注意しましょう。
ブナ
油かすのみの肥料。
芽が伸び始めた春先から梅雨時までに1〜2回施します。夏は避けて10月まで月1回程度施肥します。肥料が多すぎると葉が青黒くなり葉焼けを起こしやすくなるため、水やりにも注意が必要です。
ソロ
油かすのみの肥料。
春に芽が2〜3mmほど伸びてから施肥を始め、以降は梅雨時と夏を避けて月1回与えます。落葉後の施肥は不要です。
ヒメシャラ
油かすのみの肥料。
春の芽吹きから梅雨入り(4〜5月)までに1回、梅雨と夏は避け、冬越しに備えて10月頃に施肥します。少なめの肥料が樹形を整えるうえで効果的です。与えすぎると枝が伸びすぎたり、紅葉が美しく進まなくなることがあります。
イチョウ
油かすのみの肥料。
春の芽吹きから梅雨入り(〜5月)までに2回施肥します。夏は避け、9〜10月の紅葉前までに月1回与えます。樹勢が非常に強いため、生長を抑えたいときや黄葉がうまく進まないときは肥料を控えましょう。
ギョリュウ
油かすに骨粉を1〜2割混ぜた肥料。
春の芽吹きから梅雨時を避けて秋まで、毎月2〜3回施肥します。肥料を大変好む樹種ですので、肥料切れが起きないよう注意します。油かすの水肥は通常10〜20倍希釈ですが、5〜10倍の濃度でも肥料負けしません。
花物類
油かすに骨粉を混ぜた肥料。混合肥料・化成肥料も適宜使用します。
花が咲き終わったら寒い時期でも施肥します。以降は梅雨〜真夏を除いて毎月1回与えます。9月・10月は各1回しっかり施します。8月下旬からは肥料やけを防ぐため、薄めに与えていきましょう。
桜
油かすに骨粉を混ぜた肥料
春の芽吹き頃から10月まで、梅雨時と真夏を避けて月1回肥料を与えます。
フジ
油かすに骨粉を3割程度混ぜた肥料。窒素分が多すぎないものを選びます。
他の花物類より肥料を好む樹種ですので、生育中は肥料を切らさないようにします。花後から施肥を始め、梅雨〜真夏を避けて8月下旬〜10月頃まで月1回施肥します。お礼肥として花後に窒素:リン酸:カリウム=5-10-6の液肥を2回ほど与えると生育が向上します。
サツキ
油かす、または油かすに骨粉か魚粉を1〜2割加えた置き肥か水肥。
1月下旬〜4月は月1回、5〜6月の開花前後は控えめにし、芽が出始める2〜3月と樹が充実する8月下旬〜9月に多めに施肥します。
サルスベリ
油かすに骨粉・魚粉を2割程度混ぜた肥料。
5月中下旬、開花直前の7月中旬、開花後の9月・10月に各1回施肥します。
ボケ
リン酸とカリウムを多めにするため、油かすに骨粉を3〜4割配合した肥料。
花後の4月頃から施肥を始め、梅雨時を避けて7月中旬〜8月に再開し、10月まで月1回施肥します。水肥も活用できますが、濃すぎると肥料やけを起こすため濃度に注意します。
椿
油かすに骨粉を3割程度混ぜた肥料。
新芽が出る4〜5月は施肥し、花芽をつけさせるために6〜7月は肥料を控え、8〜10月に月1回施肥します。
実物類
ヒメリンゴ
リン酸を補うため、油かすに骨粉を5割混ぜたもの、または油かす:骨粉:魚粉=5:3:2の配合肥料。
結実して実がある程度大きくなってから施肥し、夏は避けて9〜10月に月1回与え、春の開花・新緑に備えて1月に寒肥を施します。
カリン
リン酸を補うため、油かすに骨粉を5割混ぜた肥料。
結実して実がある程度大きくなった4月下旬〜5月上旬から梅雨入りまで月1回程度施肥し、夏は避けて9〜10月に月1回与えます。肥料の効き具合は葉の色で判断し、効いていれば葉に光沢が出て、不足すると黄ばんできます。
マユミ
リン酸を補うため、油かすに骨粉を5割混ぜた肥料。
春の芽吹きから8月までに5〜6回施肥します。実の色をよくするため9月から施肥を休止し、肥料切れの状態にします。その後10月か11月に1度与えます。実を多くつける樹種ですので、それに見合った肥料量が必要です。肥料切れには十分注意しましょう。
ピラカンサ
リン酸を補うため、油かすに骨粉を3割混ぜた肥料。
春の芽吹きから梅雨時までに2〜3回施肥します。8〜10月は翌年の新芽のために秋肥を与えます。肥料を好む樹種ですが、水肥を使う場合は頻度を多くして濃度はやや薄めを心がけましょう。
ウメモドキ
油かすに骨粉を2割混ぜた肥料。
春の芽吹き頃から施肥を始め、開花・結実期は休止します。実の様子を見ながら6月頃から少しずつ与え始め、梅雨時は避けて10月まで薄めの肥料を毎月2〜3回施肥します。肥料を好みますが、根が肥料負けしやすいため注意してください。
ミヤマカイドウ
油かすに骨粉を3割混ぜた肥料。
春の芽吹きから梅雨時までに2〜3回施肥します。梅雨と夏は避け、9〜10月に肥料を与えます。結実後はやや多めに施しますが、与えすぎには注意しましょう。
ミザクロ
油かすに骨粉を2割混ぜた肥料。
春の芽吹きから施肥を始め、花後に1回、秋は実が落ちた頃に1回、計3回与えます。肥料を好む樹種ですので肥料切れに注意しつつ、薄めを心がけてください。
まとめ
肥料の効果・種類・樹種別の施肥方法についてご説明しました。成分の役割を理解すれば、樹をどのような状態に育てたいかをイメージし、それに合った肥料を選ぶことで盆栽づくりが深まります。剪定や針金かけと同様に、施肥も盆栽管理の重要な要素です。
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